●パキスタンの政変もありうる
先回『オサマ死亡』のコラムはその日のうちに書いたのですが(二日後にアップ)その後のパキスタン国民の米憎悪が予想通り激しい。いまのところはビンラデンを殺害し、主権侵害を難じるデモだが、いつザルダリ大統領、ギラニ首相の従米政権へ矛先を向けないとも限らない。
軍トップのキラニは、ムシャラフ前大統領兼国軍最高司令官の副官から辞任したムシャラフが後任に選んだホネのある将軍だ。だが如何せん、米の資金で賄われている軍隊だから、言いたいことも言えず『次回米が同様の無断で単独軍事行動をとることを許さない』と無益ながらも楯突いたのは政府内でこの人だけ。
●高まる反米感情のしこり
殺害の翌日、国外逃避中のムシャラフが米の主権侵害とその影響をUAE紙のニュースに話した論旨が的確とおもう。特に急襲殺害されたことはやってよかったと醒めた見方をしている。そのうえで主権を比類なきまで無視した米のやりかた、それを正義がなされたと評価する反米感情のシコりは世代を超えて踏襲されるだろうと意見をのべた。
ひとつ付け加えると、パキスタンの核兵器は中国の原子炉支援で保有数を急速に伸ばしているが、どこに保管されているのか管理体制は米も掴めていない。キラニが米にちょっと頑になれる唯一の持ち駒が核管理体制の秘密である。
●SEALs Team 6の使命はKill
さて、Navy SEALs Team 6(海兵隊特殊部隊第6チーム)とは対テロ暗殺部隊である。襲撃の状況をどう言い繕おうが使命はKill、指令はこれしかない。生きて捕らえてビンラデンが何を言い出すか、米に都合の悪い事柄はロシア軍とムジャヘディンの時代からいっぱいありすぎるではないか。ま、相当ひどい殺し方だった--……HWでオバマ、バイデン、クリントン、CIAのパネッタ次期国防長官が見たライブヴィデオ40分のうちの24分が塗りつぶされBlacked outだった。それほど酷いシーン、あるいは特殊部隊が見せたくない汚点となるシーンが多かったのだろう。
本来9.11の報復・仇討ちですから生け捕りでは意味をなさない。またオサマの殺害写真を見せないWHの決定にも賛成する。海に水葬というマフィアの抗争でよくあるやりかたも致し方ない。カーターが人質救出に夜のイランの砂漠にNavy SEALs Team 6を急襲させ、ヘリが互いに接触し凄惨な失敗に終った事例を覚えている者には、今回一機墜落したものの全員元気に生還できた。オバマがチームをねぎらったそうだが、喜色満面だったにちがいない。
●米とイスラム乖離の種
だがしかし、問題はアルカイダその他からの報復テロが増えるだけではない。オサマ殺害の方法は、米とイスラムの乖離がオバマの公約と逆に広がる種を蒔いた。これを修復するのはオサマを探し出して殺すよりももっと難しい.(了)