安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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シリア不穏と「ダマスクスの春」
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〈 2011年 3月 30日 水曜日 )


●シリア内閣総辞職
シリアの反体制デモは治安部隊の発砲で死傷者が出ても衰えを見せず、11日目の29日、内閣総辞職に発展した。オタリ(Muhammad Naji Otari)首相は03年以来、毎年首相が交代する日本より、政府としては安定していたといえる。

各地で起きる反政府デモはエジプト並みだが、アサドが君臨する首都ダマスクスほか、アレッポでもアサド支持の大規模デモがあった。トリポリのカダフィ支持デモの高揚期よりもっと大きいことに、考え込まされました。

少し前の記者会見で政府の報道官女性が、CNNとBBCを名指しで虚報をばらまいていると叱責「発砲したのが政府軍というなら証拠を見せろ。デモの群衆は武器を持ったギャングに煽動されている。彼等が軍施設を襲ったからだ」と毒づいた。一党独裁政権の報道官は中国もリビアも同じ反応を示す。

●初心忘ルル莫レ
政治犯の釈放や内閣総辞職を受け、アサド大統領が今日・水曜日に紛争以来はじめて国民にTV演説を行い、アサド父子政権以来の非常事態(戒厳令、秘密警察による逮捕投獄)を解除、バース党による一党独裁を廃止する政治改革、報道・発言の自由化などに取り組む姿勢を明らかにするといわれている。

父の故アサド(Hafez Assad)はブッチャー(屠殺人)と呼ばれるほど鉄の圧政を布いた。01年に父を継いだ息子のアサド(Bashar Al-Assad)は英国で教育を受けた青年らしく、「ダマスクスの春」という民主的政治改革を始めたが、たちまち父の遺臣政治家と家族にストップされレジーム継承を強いられた。そしていつのまにか民主化を忘れ、反米・反イスラエルの首魁に成長、パレスチナ人とレバノン人の庇護者となり、ヒズボラ支援、ハリリ殺害の黒幕疑惑が消えない男になっていた。

「ダマスクスの春」は再び訪れるであろうか。アサドにその気があっても国民の大多数を占めるスンニの反政府コアはアサド退陣まで引かない構えである。今日のアサド演説が紛争終結と民主化に一歩前進するか、さらなる国民の反発を引き起こすか、方向を示してくれる。(了)





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