安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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リビア、隔靴掻痒の多国籍軍
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〈 2011年 3月 25日 金曜日 )


●米は後部座席に
米のコマンダーによって始まった多国籍軍のリビア空爆は、三日くらいでリビア軍の軍事施設を破壊し、あとをNATOの指揮権に委せる……というのがオバマとゲーツの意図だった。戦闘機や母艦からミサイルでリビア爆撃することは米議会の承認を得ていないのだから多国籍軍の後ろの席に早く移りたい。イラク、アフガニスタンで手一杯の米はこれ以上中東に米の軍事的存在感を出したくない事情は言うまでもない。

しかしNATOのパリ閣僚会議(アラブ連盟各国も参加)は内輪もめが3日続いてサルコジ議長はまとめられなかった。メンバーのトルコが空爆に反対し,国連決議で棄権したドイツ・メラケルも軍事介入の行き過ぎに躊躇したためだが、一度は不満を表わしガス抜きしたあとは反対派もシブシブ同調する。こうしてやっとNATOが指揮権をとることが決まった。小学校のクラス会もNATO加盟国首脳会議もそういうプロセスが必要なのですね。トルコとドイツは艦艇を地中海に派遣することになった。

●嫌米ムーサの狼狽
アラブ連盟事務局長のムーサは、感情的嫌米の発言ばかりするのでわたしは感情的にこの男が嫌いである。エルバラダイといい、ムーサといい、こんな輩がエジプと大統領になったらエジプトの混乱と停滞は避けられない。

話しを戻して、ムーサは英米仏の空爆初日にカッカして空爆を批判した。アラブの皆様にメンツが立たない、こんなはずではなかったと。国連決議1973を読んでいないの?早く決議してくださいと米にお願いしたのはリビア以外のアラブ連盟加盟国ですぞ。ま、すぐに国連決議を尊重すると修正したが、ムーサは謝らない。

●口が滑ったプーチン
プーチンはもっと激しく「決議は不完全、中世十字軍を想起させる」とモスクワから遠い出先で気が緩んだのか言ってしまった。拒否権を発動すべきと言ったとか言わないとか。困ったメドベージェフがプーチンの名前を出さずに逆襲し、プーチンはあっさり私見であって政府見解は大統領にあると訂正した。もっとやり合ってくれれば二人の葛藤がはっきりしてロシア情勢が読みやすくなるのだが、残念でした。

●カダフィ空軍は破壊したけれど
米は絶対にBoots on the groundを避け、英仏も決議にそってカダフィ追放とレジームチェンジには実力行使できない。これでもしカダフィが反政府派を破り政権存続、息子が継げば一大事である。そしてこのカダフィ政権存続は、トリポリ西の拠点ミスラタMisrataを落とさない限り大いにあり得る。

ということでミスラタ攻防が焦点となる。空爆開始から6日目の25日、リビア空軍の練習戦闘機(G-2/galeb,昔のユーゴ製)がミスラタ空港に着陸したところをフランスのRafale戦闘機がミサイルで破壊した。空爆出来る軍事施設は総て破壊した。もはやリビア空軍は存在せず、飛行禁止空域も意味をなさない。

だが、住民の間に入り込み、市内にいる戦車部隊はアジュダビアでも手当り次第に病因まで砲撃しているという。市民の生存を守る国連決議は市内にいるリビア地上軍に対して空からではどうしようもない。かといって地上部隊を派遣する国はなく、アンチカダフィのリビア人も大反対だ。隔靴掻痒の多国籍軍のできることは反カダフイ民兵にアドバイザーを派遣することぐらいか。

国連はリビア政府と25日金曜、アヂスアベバでアフリカ連合AU 各国とリビアのカダフィ政権と、ベンガジの反政府暫定政権代表も参加した会議をひらく。アフリカでは何も決まらないとだけ言っておこう。NATOのリビア会議はパリからロンドンへ移して火曜日から開催。(了)





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