安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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大震災報道、当地では
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〈 2011年 3月 22日 火曜日 )


●海外メディアが報道する日本
海外メディアが伝える福島原発のニュースがことさら危機を煽り、日本政府の発表を理解しようとせずもっぱら自国の権威とやらの生半可な情報をもとにした解釈を仰ぎ、その結果メディアと専門家が相乗的な危機観を創りだしている。このことを憂える海外在住邦人の書き込みや、日本特派員記者の憤慨した報道がある。日本人特派員の現地報道にも誇張や興味本位があることを反面教師にしてくれたらとおもう。

海外記者が通訳無しに直截インタビューなり、日本語の速報ニュースが取れないのだから(枝野官房長官会見の同時通訳は要領を得ない)ニュースバリューを上げるには危機感増幅、スキャンダル(政府は事実を隠している)とお涙頂戴式のヒューマンストーリーが好まれる経緯は理解出来るだろう。

●善意の同情と正確な知識の落差
日本に限らず当事国が違和感を覚えるのが国際メディア、正義漢ぶって危機を煽り、醜聞と視聴者の興味に迎合する姿勢は、この世界の矯正不可能な悪しき宿命である。わたしは誇張、風評類いの外来報道の免疫ができた。

先日当地の名誉領事イルゲンス氏と今回の大震災について、話しがメディアに及ぶと顔をしかめて『ジャーナリストはただblow-up するばかり』と一蹴しましたな。やはり見識がある。とはいえ一般市民は膨らまされた報道と先入観というか、無知というか、特に理解しようと努力しないから日本中が地震津波と放射能に見舞われ、飲み物も食べ物もなく、凍えている。なんてお気の毒なんでしょう。と善意の人はこのタイプが多い。

そして、日曜日の教会礼拝は全国的に牧師のお話がツナミ被害をテーマに、献金しましょうとなる。今日、郵便局で近所のあばさんに「あなたの家族は大丈夫」などと善意の配慮をもらった。こういう場合、先方の誤解を解こうと「人口の大半は災害の圏外、東京の空気も水も人体に危険はありませんよ」なんて言うとがっかりして、そんなことない放射能が……と怒る人もいるのが経験でわかっているから、話しを合わせておく。40年当地に住んでいると慣れっこになります。

●ノルウェー各界指導者の日本べた誉め
さて、当地のメディアは他の諸外国に比べれば最良であろう。首相、外相、野党党首、元国連緊急救援調整官で現人道問題担当国連事務次官などの諸氏は、日本の危機管理、災害対策と規律を守る国民性に全幅の敬意と信頼を置いている親日知日派なので、聞いているこちらが赤面するほどの賞賛ぶりである。事情を熟知しているノルウェー政府は支援申し入れを即刻通知したが、日本の災害相策指揮系統を乱さないようにという理由で要請があるまで救援隊と物資は待機させていた。

当地の赤十字も然り。モッレクレイヴ会長は「日本赤十字は2万人の規模で組織力と機動力は世界一、相互に助け合う国民性」などTVに出るたびベタ誉めである。先日やっと日赤十字からなにか要請品があったらしい。

やはりこのところTVに常連の放射線研究所所長は日本の原発規格や管理はどの国より厳しく能力があると、記者のメルトダウンや危機を描く質問に辛抱強く答えている。地震のときに必ず出てくる旧知の地震学者は、メカニックの解説ばかりでなく地震の規模がハイチの1000倍に達すること、津波の地域がノルウェーの西海岸からボードーまで広がったなど、当地のおばさんにも解るように説明がうまい。日本の陸海に張り巡らされた観測網は世界に類がないこと、神戸復興の迅速さなどをディベート番組で健闘していた。

おかげさまでEUのエッティンガーエネルギー担当委員のような暴論「今後数時間以内に、日本国民の生命を脅かすさらなる大惨事が起きる可能性がある」と水蒸気爆発の映像だけを根拠に公言するバカは当地にいない。

但し、自国民の退避勧告、在京大使館が昨日神戸に漸時移転を決めたが、最悪事態を想定しての欧米協調体制ですから当然のこと。

●津波犠牲者支援コンサート
上記の表題コンサートが月曜夜オスロで行われた。トゥリーネ・レインTrine
Reinという日本で人気がある(私は知らない)歌手が率先して企画。歌手,演奏家が10数人集まり、赤十字が後援、オスロ市長や主賓にホーコン皇太子を迎えて行われた。

当地ベルゲンでは教会オルガニストの武井真理子さん、ピアノ教師の穴沢明子さんが中心になってグリーグアカデミーの留学生も大挙出演して次の日曜日にコンサート「がんばれ,日本」があります。(了)





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