●くすぶりから爆発へ
昨年12月からチュニジアは不穏な情勢にあった。失業率の高さと食品価格高騰からくる不満が、抗議焼身自殺した大卒失業者の事件をキッカケに噴き出したのだが、先週から大きな市民デモに発展した。それでも整然とした平和的なデモであり、かの独裁者ベン・アリ大統領が物価を下げるとTV演説した時は「これでおさまるかな」とおもわれた。
しかし考えが甘かったですな。そうたやすい背景ではなかった。デモは膨らむばかりで政府が倒れるのは時間の問題と誰の目にも見えてきたところで、ベン・アリは解散総選挙を発表、首都チュニスに厳戒令を布いておいて金曜日にベン・アリが国外へ逃亡してしまった。23年も独裁者だったが、謹厳な学者風で隣のカダフィのような華やかさはない。目立たない独裁者でした。
●ムスリム・チュニジアの自発的民主化運動
チュニジアイスラム国家では最もまともな国であり、イタリアとは目と鼻の先にあって街並もきれい。野党も多くそれにムスリム国家では民衆レベルが高い観光立国だった。イランやイラク、サウジやエジプトなど民主化を西側から迫られている国ではなくて、チュニジアから民主化の動きが噴き出したのは盲点でした。やはり民主化運動などというものは輸出も輸入もできない。政治体制は国民が決めることである。チュニジアがその先鞭をつけた。
●伝染する民主化要求反政府デモ
すでにカダフィが隣国の現象を注視、チュニジアの政治変革に啓発された市民がデモしないか緊張している。反政府デモがモロッコ、リビア、アルジェリア、エジプトに伝染してきた。
首都は戦車を動員した軍が警戒し、商店略奪が鎮静化したが軍と大統領警備隊が銃撃戦、大統領警護の側近NO1が逮捕されたもよう。
ガヌーシ首相が与野党協力して新政権を発足、予定通り日曜に組閣できていないが軍が新政府側にいることで安心出来る。新内閣は60日以内に大統領選挙を実施し、政治経済社会改革に励むことになる。もし新政府が国民の支持を受けより民主的な改革が進むようなら、ムスリム国家にチュニジアに続けとドミノ現象が起こる可能性がある。(了)