●6週間の波状デモ、高校生暴徒化
フランス各地でのデモが暴徒化してきた。年金年齢引き上げに抗議して労働組合が組織したデモがはじまったのは9月7日、以来各業種の組合が連帯してゼネストを含むデモを毎週のように大動員し、きのう月曜日で6度目である。参加した人数は足し算すると約1000万人に達する。
日本なら一度に全国各地で100万人が抗議デモすればたちどころに政府は倒れますな。ま、100万人が集まるわが国ではないけれど、フランスでは昨日110万人(内務省)から330万人(組合)デモ隊が繰り出した。デモは5度目の10月16日から高校生や不満分子の若者が暴徒化し、商店略奪、車をひっくり返して火をつける定番の暴れよう。警官隊にストリートファイトを挑んだ。中国では報道わずか、絶対にゆるされない行動という視点でみればフランスは「しあわせな怒れる若者」にみえる。
サルコジは内務大臣のとき、職と人間らしい住居を求める移民地区の暴動に治安警察の大部隊を投入し、力で鎮圧した。それがサルコジ人気をよび、大統領になれた一因である。暴徒には放水車で催涙弾で強硬に対処するだろう。
退職年齢を60歳から2年引き上げ、年金全額支給を65歳から67歳に延ばす年金改革案にたいして、フランス人はなぜ度し難いほど反対するのか.現行制度の60歳退職は欧州で最も早く、そんな贅沢はムッシュー許されません!
●フランス式大衆運動と個人主義
高校生は退職年齢が伸びるとそれだけ就職口が狭まる、税金も長く払わされると校門にバリケードを築き学校封鎖におよび、ストリートファイトに生き甲斐を見いだしている。政治が若者に生き甲斐を与えるのは不可能なので、生き甲斐教育が役に立ったためしはない。欧州経済の回復は国際社会の大きなうねりによりけりです。
1968年フランスの学生デモ(パリ革命)に呼応してドイツ、日本を席巻した荒れた大学紛争を思わせる。彼等はそれなりにオカシな思想背景があったが、2010年フランスの労働者や若者は貧富の格差社会など、現状不満のはけ口に利用しているのみ。ゆえに警察が取り締まればそれでよい。
問題は、総合的にサルコジの独走に国民が生み疲れ、ストライキが政府に背を向けた国民を浮き出させた。12の全製油所ストによるガソリン不足、航空機1/3がキャンセル、地下鉄半数、鉄道も間引き、歩道に腐りだしたゴミの山など市民生活に支障をきたしているにもかかわらず統一抗議行動に国民の71%が支持を表明している。これぞフランス人の個人主義が為せる一致。
●サルコジ支持率急落30%
サルコジの失敗は法案提出に際して労働組合に根回しせず、本来は首相の仕事だがなんでも自分でやらないと気が済まない。フィヨン首相なんて、名前を言えないフランス人がけっこういるらしい。当初75%もあったサルコジ支持率が昨日のホカホカ調査では30%、オバマ、菅両氏より低い。
状況は68年のポンピドーが折れた状況より悪くみえるが、サルコジは断固屈服しない。「サルコジ憎っくき」感情が最高潮の今日20日、フランス上院が法案を採決する。可決される見込み、そうあってほしい。(了)