● 増加する一方の候補者
今週金曜日に「ノーベル平和賞」を誰が授賞するか発表される。今年は史上最高の候補237名が選考委員会に推薦された。うち38は組織・機関がノミネートされた。推薦資格者は国会議員や大学教授まであり、日本人の有資格者/組織だけでも数千名いるだろう。推薦者が推す候補者の多くは重複していいるので今年の237名は異常どころか今後ますます増加の一途を辿り、減ることはない。50−60年代にしばしば見られた「該当者なし」の年を復活出来ないものか。
●今年の最有力
今年のfavorite No1は 「08憲章」(マニフェスト)の劉暁波氏(Liu Xiaobo, 54)がメディアの一致するところ。中国は氏に国家政権転覆扇動罪を適用しこの2月に11年の実刑判決を出した。反政府犯罪者に平和賞を与えないよう恫喝してきた。
●中国、ノルウェーに圧力の波状攻撃
この夏7月、当地ノルェーのオフショー石油開発技術の視察に政治局員の賀国強He Guoqiang,が当地を訪問、大物である。ストーレ外相およびノーベル平和研究所の理事長であり選考委員であるルンネスタ(Lundestad)と会談、そのさい「劉暁波に平和賞をあたえる間違った糸をひいてはならない。授与は非友好的であり両国の関係を損なう」とルンネスタはざっくばらんに公表した。賀国強は内心煮えくり返っただろう。
つぎに傅瑩(Fu Ying )外交副部長がやってきた。温家宝の腹心である彼女のミッションはノーベル平和賞委員に直々警告・圧力をかけることである。会談したルンネスタは、いつもの如く会談内容を記者会見でバラした。ダライ・ラマ授賞のときにもあった圧力、チェコ反政府の作家ヴァツラフ・ハヴェル(Vaclav Havel後大統領)は熱の理由で結局受賞できなかったが、中国の圧力はそれ以来のことで今に始まったことではない。もちろんルンネスタは傅さんの説圧を拒否した。
傅瑩(Fu Ying )外交副部長は、チベット紛争を中国が漢民族にたって力ずくで制圧した紛争時の在英大使として、中国の正当を諄々と訴え、英メディアに出ずっぱり、英国世論を沈静化した有能あっぱれな外交官である。時の政府が信頼出来る外交官の鑑といえる。だが、この人がウイグル出身であり、チベット族の感情を理解しながら完璧な政府ベッタリ論客であることに疑問を抱いている。わたしには虫酸が走る最高にイヤな人像だ。
●77憲章と08憲章
劉暁波にノーベル平和賞を与える運動の総元締はV.ハヴェルである。劉暁波が書いた「08憲章」はが1977年にチェコの共産党独裁体制から民主化を訴えてV.ハヴェルが書いた「77憲章」を下敷きにしている。それもあるのか,今チェコは議員や知識人91人が劉暁波授賞を支援。これも圧力に違いなく、選考委員会はノーコメント。
●議員と学者出身の左寄り選考委員
選考委員は殆ど左翼系、委員長は昨年からヤグランド元首相で現欧州評議会議長が任命され、このひとが初めての仕事でオバマに授与して賛成反対一様に仰天させた。新大統領の平和ヴィジョン、対話と核無き世界に有頂天になったあげくもう一押し支援したいと、オバマニアのヤグランが左派委員と結託して決定した。わたくしめに言わせれば破廉恥。
ヤグランはできれば中国と平穏な関係を望むひとである。だがどうなりますか、劉暁波は亡命中に英語をマスターしている。奥さんも英語ができてたいへん美人であり、服役中の夫に代ってメディアがフォロウできる。みなさんはそんなの関係ないと一蹴されるでしょうが、受賞後国際的にフォロウできる人物が有利なのは当然、バイリンガルの麗人ミャンマーのスー・チーさんが良い例である。
補記:オスロにあるノーベル平和研究所は展示室があり、観光スポットでもある。政治歴史学者のルンネスタは選考委員としてではなく、その研究所の理事長として外国の政治家にも会うので、選考委員が推薦者と接触することは不可。
明日はその他、当地のメディアが予想する有力候補を列挙します。(了)