●円高83円台は容認できない
日銀による為替介入は本気でなかったのか、83円半ばがつづいている。一気に総額2兆円を投入してドル買いし、85.75円までつけたのに気をよくして「85円より円高にふれることはないだろう」と書いたのはもちろん市場介入が順次発せられると読んだからだ。日銀が83円台なら許容範囲だとしたらとんでもない。金融緩和追加措置をやるらしいが、チビチビした国内資金供給より第二、第三の為替介入によって円資金の放置の効果が出るように仕向けることが肝要と心得る。
●理不尽には怒りを持続せよ
尖閣の暴力船長を釈放したから中国が軟化したのではない。釈放によって日本国民の政府非難と中国への悪感情が沸いたからである。また英雄漁船船長を一転して軟禁したのは、この人民軍兵士であった前歴の船長から聴取して衝突の経緯を知ったからであり、その映像が国会で公表されることを怖れたからである。しかし公表を政府は見送った。フジタの社員が・・愚かな危惧、正しい証拠開示をためらう理由などない。中国首脳にゴマスリしてまで会って説明したいのがどれほど卑しい態度か、わが政府にお解りの政治家は誰もおられない。友好には互いに敬意を持って接する土台が必須条件である。その土台作りには理不尽で行き過ぎた要求を突きつける相手を、そうできないようまず矯正することが先決。どうするか、簡単なことだ。毅然と不動の対応を示すだけでよい。
●毅然と不動のサルコジ
2日、フランスでは定年を60から62歳にのばす年金改革に反対して三度目の大規模デモが行われた。すでに4度目の日付も決まっている。だがサルコジは一切取り合わない。先進国ではあと20年もすると、アルツハイマーと健忘症老人が人口の40%になるといわれる。国家予算を圧迫する年金制度の改革が「理」、維持出来ない制度を守るが「理不尽」。サルコジは毅然と不動である。
●強まる米の中国批判と中国の出方
昨日、温家宝首相がCNNに出演して米下院を通過した「対中制裁法案」を政治問題化と非難、人民元切り上げで中国からの輸入は減らないし、米の輸出が増加するわけではない、と国連総会の際オバマとの会談で論争勝ちした見解を述べた。この見解に反論するのはむずかしい。しかし不公平な人民元レートにあることは免れない。
オバマ・温家宝会談の前日、温は日本に「更なる制裁措置」を課すと述べ、レアメタル禁輸とフジタ社員逮捕で船長を釈放させた「実績」に自信を持ったのか、全米に現行人民元レートが正しいと開き直ったのである。だが米国政界では、中国がなりふりかまわず、破産国アイルランドやギリシャで、破産危機のアイルランドに融投資をもちかけ、パキスタンに原発建設、国連制裁のイランからは、撤退した仏トタルオイルや当地のスタトオイルの油層、日本が撤退したアザデガン油井を横取りしようと動きだしたことに不快感を募らせている。今に始まった中国の資源漁りではないが、上院で破棄され、オバマが拒否するハズだった「対中制裁法案」の雲行きが怪しくなってきた。はたして中国は人民元切り上げに折れるか、対米制裁措置で対抗するか。米中間選挙に影響力を行使するカードを得た中国、という見方もできる(了)