想い出の往昔映画を懐古

故Tony Curtis往昔の映画を懐古したく、出演作品リストをネットで探し見る。魔術師フーディーニを演じた題名が「魔術の恋」とはすっかり忘れていたが、手足を縛って水槽に逆さ吊りになってもがく迫真のシーンが蘇った。フーディーには縄を解いて浮かび上がる魔術である。縄が解けず苦しみ出すが観客は演技と思っている、そうするうちに動きが止まりやっと舞台袖の友人が異常に気付いて水槽を鉄槌で割って助け出すシーン。水がドーっと舞台から観客席に流れる。トニー・カーチスはほんとうに溺死寸前に見えた。

「四角いジャングル」でボクサーに扮して戦う場面も壮絶だった。同じ頃ポール．ニューマンの「傷だらけの栄光」が上演され、こちらの方が作品として有名である。Tony Curtis, Paul Newman, Marlon Brandoは同時代の俳優であるも、トニーは偉大なる俳優として栄誉をうけることはなかった。演技力を発揮する作品に恵まれなかったのかもしれない。しかし前述した肉体的な迫真の演技は演技力以上のものであり、ただの二枚目には絶対できない。

●全盛時ハリウッド俳優の雑種性
ハリウッド・全盛時代の俳優は日本の世襲歌舞伎役者や二世俳優と違って生い立ちが雑多な職業を経て苦労しているので人間の幅と深みがある。筋書きは忘れたが「空中ブランコ」のバート・ランカスターはサーカス上がり、映画で実際にプロの空中ブランコを見せた。共演のトニー・カーチスはサーカスの経験はないが見事にこなしていた。わたしの好きなオーディー・マーフィーとトニー・カーチスが共演した「命知らずの男」、列車強盗ジェシー・ジェームズの映画は２度見た。Audie Murphyは第二次世界大戦の英雄でいくつも勲章に輝いた英雄と映画好きのA君に聞いた。その英雄の「抜き撃ち二挺拳銃」を一緒に見たA君も逝ってしまった。

「奥様ごめんなさい」1959年製作映画がリストにあった。主演はトニー・カーチス、ディーン・マーティン、ジャネット・リーという我が目に最高の豪華キャスト。ところが見逃すハズのないこの映画を見た記憶がないのだな。なんとか思い出そうとコメディーのあらすじを読んでもピンとこない。で、きょうはいらいらし落ち着かない夜になりました。

●トニー・カーチス、人間の幅
先回トニー・カーチスの哀切、ペーソス男らしさを実感として書いたのだが、プロファイルを初めて見るとおどろき納得させられました。ユダヤ系ハンガリー移民の子で貧困家庭はNYに多々あった境遇だが、貧困に加えて非行、11歳の時弟がトラックに刎ねられ死ぬ事件に遭遇、少年感化院に送られ更生して高校へ。底深い少年期のキズ心を持っていたわけだ。休学して海軍に入隊し潜水艦の信号兵だったという。高校卒業後NYの演劇学校へ通いハリーベラフォンテが同級にいたそうな。グリニッチビレッジで舞台に出ていたところをUVSにスカウトされハリウッド入りする。

10代の頃のわたしは認識せずとも、トニー・カーチスによぎる哀愁のシブさを感じていたのだろうか、人生を教わった確かな実感がある。（了）

余談：当地に来てからロジャー・ムーアと共演するTVシリーズがあった。ただ見る方の筆者がもはやいいおとなになっていたので印象うすく懐古の念なし。カーク・ダグラスと共演した映画「ヴァイキング」はハルダンゲルフィヨルドの町ノルハイムスンがロケ地でした。筆者が当地に移住した頃、土地の人からよく聞かされました。