ちょうど一週間、好天の東ノルウェーで過ごして家に帰ってみたら、こちらも好天だったのか、花がからからに乾いて、花瓶の水0.3lくらい蒸発していた。窓をほんのすこし開けておいたが、カーテンはしていない。鉢花１ダースはオウト、可哀想なことをした。

●最後のハリウッド俳優
いま、俳優トニー・カーチスの訃報を知る。享年85歳。50〜60年代に彼の映画を何本見たことか、多くはSome Like It Hot.に代表されるロマンス喜劇だった、今日でいうなら「イケ面」だが、男らしくて女たらしで見て、どんな役でもトニー・カーテチス丸出し、楽しい映画ばかりだった。シドニー・ポワチエと競演の「手錠のままの脱獄」はガラっとシリアスな映画だったが、わたしはやっぱり内容はどうでもよい楽しいトニー・カーチス映画が好きである。同じようにディーンマーチンの底抜けコンビも日本で上映された作品は全部みただろう。

●God-looking俳優はかくあるべき
女優さんではトニーと結婚したジャネット・リーとか、ジュリー・アリソンの出る映画をたくさん見た。中学生の頃、三流西部劇の主役たち、オーディー・マーフィーやランドルフ・スコットは欠かさず見たものだ。どうもわたしの好きな俳優はアカデミーとか演技力には関係ないらしい。娯楽品にある哀切、ペーソス男らしさ、今にしておもえば安っぽい感傷であっただろうが、それでいながら名画以上に人生を教わった確かな実感がある。

●トニー・カーチスの絵について
20年くらい前だろうか、彼がハワイに住んでいた頃描いていた天真爛漫な絵を紹介する番組があり、絵を描くのが一番好きという個性を知った。大成した画家には起きている間中絵を描いている人もいれば、秋の展覧会に一点ぐらいしか仕上げない大家もいらっしゃる。毎日描かずにおれない生まれつきの絵描きさんでありながら、食ってゆけない人もいる。トニー・カーチスは晩年毎日一点描いていた。俳優として150ばかりの映画に出演、TV映画のゲストにもよく出ていたがアカデミー賞はない。彼の絵も国際展で大賞を受けたことはなし。しかし映画同様、とてもたのしい抽象画である。

小生は男らしくもなく、女たらしになりたくても絶望的。イケメンではさらさらないが、人生の豊かさと楽しさを教えてくれた［本物の人］トニー・カーチスが懐かしい。（了）