●ヴィヴィアン・レディンの舌禍
今週のEUサミットはサルコジ-フランスのロマ・ジプシー送還で激高した首脳たちが肝心の議題をそっちのけで議論の応酬となった。売り言葉に買い言葉、あまりほめた内容ではないが、16日初日のレヴィン(Viviane Reding)という女性のロマ送還非難演説は、反論を静かに聞くタチの小生が『何だよテメエ,でかい口効きやがって』と心中呟くほど腹が立った映像である。自由と人権,EU間の自由移動に反すると非難し、さらに第二次世界大戦の親ナチ政権に夜強制送還に匹敵するとムチャな言いがかりを正義ヅラしていう。箸にも棒にもかからないオバサンがかさにかかってくると始末に負えない。
●出しゃばる欧州委員会
スペインはロマが多くまた何世代も住み着いているので欧州委員長のバローゾはロマ慣れしていることもあろう、送還には否定的でEUの基本に沿って、反対してきた。この女性は欧州委員会で報道・メディア担当する副委員長の地位にあるが、バローゾ委員長のように政治的ではないので言うことが直線的でナイーブである。つまり先がよめないバカ。欧州委員会は加盟国が条約を守っているかウォッチし、罰金を科したり必用あれば欧州裁判所に提訴するEUの行政機関である。で、レディングはロマ送還が適法か審査を仄めかしている。
さっそく、現金給付のうえ出身本国へ航空切符付きで送還するのと死のガスチェンバー送りは同列ではないと、フランスの欧州担当大臣が揚げ足取り。サルコジは「フランスに非難の余地無し(irreproachable)」と釘を刺した。
●売り言葉に買い言葉
ルクセンブルグの外相が「悪意のある中傷」とサルコジにお返し。すると"if the Luxembourgers wanted to take them, he had no problem."(あのルクセンブルグ人が彼等を欲しいなら問題なくオーケーだよ)とからかうしまつ。こういう首脳の売り言葉に買い言葉が欧州では筒抜けになのがおもしろいおなじようにロマの多いイタリアはベルスコーニが人ごとのように激論を楽しんで一人機嫌がよい。イタリアでは2008年に成立した法律によりキャンプに住むロマを登録し指紋、出身国と宗教を把握しているという。
中傷合戦のきっかけになったレディンは、第二次世界大戦と今日のフランスのアクションを並べるつもりはまったくない、と言い張って謝りはしない。よって三日目の今日もも小生は寝付きがわるい。
●侮蔑語について
ところで「ジプシー」という言葉は「ラップ人」とおなじく侮蔑語とされ、公的に使ってはいけないそうです。くだけて言う時は「トラベラー」、旅の人という。日本ではメディアで禁句とその言い換え語が多くあるにもかかわらず、ジプシーやラップ人は無頓着に使われている。一方、チャイナ、チナ、キナなど「支那」の派生語が国際的に使われていて、ツォンゴウ(中国)と呼ぶ国などない。にもかかわらず日本ではシナといわず中国と言わなければチャイナから、日本の国語審議会からも叱られる。(了)