●マカリオスずくしのガイドさん
前回のキプロス概は丸1日の観光バスの中でガイドさんが話した内容を下敷きにしました。首都ニコシアへ近くなると話しは近代史になり、マカリオス大主教を中心にキプロス独立への道が語られる。もう『マカリオスずくし』で、客の半分がイギリス人だからシラケましたな。
でもやはりキプロスの人にとっては英植民地から独立を果たした一事に止まらず、千年以上異民族に支配されてきた住民の歓びはいかほどか、ヨーック判りやした。4年間独立抗争を指導したのがこのマカリオス三世、のち初代大統領を兼務した人物の重々しく独り言を呟くような話し方を思い出した。
●大アヤトラ・ホメイニを思い出す
筆者が成人してまもなく、セイシェルに流罪されていたマカリオス大主教が帰国し、黒ずくめの法衣に長い銀の錫杖を持って群衆にこたえる姿は白黒TVのニュースでおなじみだった。もっとも当時の筆者は政治状況がわからず興味もなかったが、あの姿は目に焼き付いている。はなしは変わるがイラン国王パーレビに追放されパリに住んでいたアヤトラ・ホメイニが凱旋したとき、わたしはかのマカリオス大主教を思い起こした。喋り方がホメイニ同じ。大衆人気がものすごいカリスマという点で共通している。
●ギリシャ系 VSトルコ系
さて穏健で政治駆け引きもできたマカリオスはトルコ系住民を切り離した形で英から独立し、英軍事基地の存続を許して60年に独立したわけだが、相変わらずトルコ系との殺し合いがたえず、それぞれ言い分があり、時の国連事務総長は難義した。ギリシャとトルコの代理戦争に発展したいきさつ、その状況、軍部のクーデター、トルコ軍の侵攻など、ややこしい歴史は省いて、現在は北3分の1弱がトルコ系住民の自治による「北キプロスは」とよばれ、そっちへ行くにはパスポートが要る。キプロスはEUに加盟したが、北キプロスには実効支配がおよばず、トルコが独立国と承認している。それでユーロを使うのは南3分の2地域である。ただし首都ニコシアにあるトルコ系地区ではユーロも使えるとのことだった。
ニコシア、古い建物の残商店街、このさきにトルコ系地区へのグリーンゾーンがあり、2004年から観光客も入れるようになった.検問所でパスポートが必要。
●EU加盟国キプロスと加盟不承認の北キプロス
トルコのEU加盟が決まれば、自動的に北キプロスもEU加盟となろうが、現在は英キャメロンが支持を打ち出したがトルコEU加盟は困難な状況にある。フランスのようにジプシーをルーマニアに強制送還したり、異教徒トルコは欧州でないという気分がつよい。
経済破綻をきたしたギリシャに比し、キプロスはどうかと心配するが赤字財政はGDPの6%、まこれくらいなら心配ないか。道路沿いに三菱クーラーの看板があり、わたしが滞在したホテルも三菱クーラーだった。日本車も多い。電力不足で晴天340日というこの国では太陽電池の需要は大きく、数年もすれば大普及するのではないか。とにかく観光産業がギリシャのように失墜しなかったのでまあまあだ。この国では日本では人気の低い緊縮財政を講じつつある。
●ギリシャ式役人天国の弊害・・あり
ガイドのお姉さんがホテル、レストランなど観光業界や一般の私企業で働くひとの給与は低く、公共機関のワーカー(とても多い)と金融業界の平均給与はわれわれの3倍ですと漏らしていた。ならばギリシャと同じジャン。投資は要注意だな。外国人に売るための瀟洒なヴィラは今が買い時と宣伝するが、まだまだこれから安くなりそうです。
海底火山の噴火でできた島キピロスの中腹は溶岩が露出する。崩壊した土砂や火山灰の斜面では樹木が多く、オリーブのほか、松や糸杉も多い。最高峰1860m、標高1750mの森の中で昼食をとったが、涼しかった。冬はたまに雪が降るらしくスキー場があるとガイドさんが自慢。(つづく)