安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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コペンハーゲン合意、二歩後退
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〈 2009年 12月 20日 日曜日 )


●脱力で死に体になる
COP15の閉幕。最近のわたし、これほど脱力感に死に体となった政治合意はなかった。翌日は何もする気がおこらず、新しく入れ替えた暖炉に薪をくべ、微妙に空気調節をしてガラスごしにゆらめく炎を見てチビチビやっておりました。

世界の助っ人気取りのオバマコペンハーゲンに来て、中国、インド、ブラジルとアフリカが同意出来る最低レベル、つまり何もしなくても良い飾り言葉で政治家のメンツだけ糊塗した合意を了承させ、あとはみなさんで決めなさいと帰っていった。そのあと徹夜で小国の首長や大国の閣僚級が会議したが、気候変動の影響をモロに受けている貧しい国の多くが退席した。翌未明の本会議でまた言葉を弱めて賛成国だけでやっと採択。正式には合意文書ではなくて『合意に留意する』ことを決定したのである。どの国もなにもしなくてよい留意内容だ。

●最初の一歩? 二歩後退です!
200カ国近い国が参加し、交渉に1000人以上を送り、100カ国以上の国家首長が出席,京都議定書から満を持した史上最大、もう2度とない超大規模の国際会議が、人類をバカにした拘束力の無い合意で2012年の結果を目指す京都議定書をホゴにしたのに等しい。即ち2歩後退である。

オバマは世界の国々が一緒に取り組む姿勢を示し、現実的な最初の一歩だと自賛する。最初じゃないよってまったく。しかし米が何も約束しないことで米国内の非難をかわし、環境で、核廃絶でオバマの理念に期待する向きは、たとえば当地の環境相や環境活動家などがこの同意を素晴らしいスタートと位置づける。白々しいではないか。

●米中はCO2の悪の枢軸
世界のCO2排出の40%が中国とアメリカで占めており、数年足らずで50%になるだろう。京都議定書のあと、先進国は削減目標値を11%としたが、批准していない米独自の意向は2020までに1990年レベルの4%である。EUが20%カットするのと雲泥の差。これでもIPCC(国際気候変動パネル)が危険な変動を避ける数値である25%削減にはおよばないのであるが。たった4%削減を目標とする米が人口比で排出量を議論する中国やインドに反論するすべがない。互いに我が道を行くことを認め合うしかないのである。オバマが政治的に落とすことで人類が破局に向かい、半年先のドイツ環境会議、1年後のメキシコCOP16で法的拘束力のある合意は絶望的になった

合意内容のポイント
● プレ工業化レベル(産業革命前)の気温上昇を2C以上にならないようにする:世界各国の取り決め目標がなくてなぜいえるのか、気温上昇はいつピークをむかえるのかすら 記されていない。拘束力が無い目標ならどの国も本当にそうなるならありがたいから賛成するわな。科学的予想は2020年にたとえ20%削減しても3C上昇する。これはカタストロフィーだ。
● 先進国は300億ドルを開発途上国に3年間にわたり援助する。2020年まで先進各国は年間1千億ドルを貧国に提供して気候変動の影響に対処する:どうやって実現させるかというと、先進国が公的資金や企業からの献金、その他様々な方法で拠出するというまことにいい加減な資金繰りを示唆する。拘束力が無いから無責任にどうとも云えます。貧国をお金でだまらせる?
● リッチ各国はガス排出量を報告し国家の主権を尊重したうえで厳しく透明な検査を受ける:国家の主権を尊重 National sovereignty is respected とは何でしょう。あたりまえの文言ですが、削減行動を測定-報告-検証する当然の取り決めに中国が怒って帰ると言い出して手直しした背景が在る。つまり中国は検査を受けなくてよいという文である。

話しは逸れますが鳩山さんがバンケットで臨席になったクリントン長官に普天間の件を説明し理解を求めたという。このニュースは米メディアの報道がいっさいなく、日本でトップ扱い。チグハグというか、クリントンは泣き言に聞こえたでしょう。鳩山さんは毅然としていればよろしい。対米関係に神経質な役人や業界や交渉担当者の懸念はわかるが、オバマやクリントンにとっての優先事項ではない。ましてやアメリカ国民は無関心、結論が来年に伸びても日米関係のヒビは極小であろう。(了)





Pnorama Box制作委員会

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