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国民納税額公開の光と影
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〈 2009年 10月 22日 木曜日 )
● 報道の自由と国民納税公開
毎年恒例のT報道の自由ランキングUが発表され、例年のことだが最も自由度が高かったのはデンマーク、フィンランド、アイルランド、ノルウェー、スウェーデンが同ポイントの首位ときた。これは政治家がイバレない制度の長い伝統があるからで、このうち3国は立憲君主制だ。さすが国王ともなれば宮内庁のようなものがあって改まったインタビューは順序を踏む。併しセレモニーに外出中の国王が移動に歩くときなど記者さんがマイクを持って話しかけるのは許されるのか常態である。TVに移ってるので王様もムゲにもできまい。プリンスやプリンセスは一般人並みだ。日本は17位、結構イイ線行ってます。ただし皇室の報道自由度となると……言わぬが花。 ●国民各人の納税額、収入資産を公開 本日、当地では恒例の2008年度国民納税リストが公開された。これをネットで見るのに個人番号も何も必要なし、知りたい相手の名前と、おおよその住所を打てば、その人の年度の収入、資産、納税額がたちどころにわかる。2007年に税金を取られすぎたとトップクラスはどういう手を使うのか税額が減るように調整する。ミリオネアーで納税トップリストにありながら収入がゼロというのが毎年かなり、さようかなりある。国教会の牧師さんは国定給与制度に準じた公務員ですが、「収入ゼロ」で大邸宅に住み、別荘があってベンツに乗っている師が新聞に出てひたすら感心したことがある。我が居住地の近くの御仁で、30年ほど前のことである。この傾向は今も衰えをみせない。いったいどうしてか、社会福祉にたより、ボランティア組織からパンやバターやインスタントスープを毎日貰って生活する人でも、幾ばくかの税は支払わねばならない。 ●となりは何をする人ぞ いまじゃネットで、友人仲間やご近所さんの収入を覗いて悔しがったり妬んだり、自惚れたり、実に下らん。不埒不肖の吾なれど、チェックしたことはない。リストは使いようでどの企業、職業がバブル崩壊の打撃を最高に受けたか、税収入の多い県、市から、住宅地別まで統計を導きだすことができる。わが町ベルゲンは人口22万あまりだが、郵便番号別に129の地区があり、これのランク付けがあって興味を引く。こういうことをするから金持ちの住む地区と、そうでないも地区がますます顕著に分離するわけだ。 この開示にだれが、どこの馬の骨がアクセスしたか、見られた本人はわからない。電話なら相手の番号が出て、番号を伏せた電話には応答しない機能もあるが、ノルウエーの各納税者の収入資産を見るのは忍者でよい。 ●戦後社会主義/福祉国家の伝統 保守右派はこの個人経済を誰でも見れる制度に反対するが、労働党政府は長い伝統であり変える考えはないという。戦後いちはやく社会主義、福祉政策をはじめた北欧は貧富を均(なら)し、疑いなく平等であることを互いが実証的に知る権利がある、とうまく説明出来ないがそう言う趣旨ではじめた。役所にでかけて青写真を貰う昔なら趣旨だけでよかった。ネット交信の世では、相互チェックが過ぎて恒例娯楽のひとつである。 ●残してもよい遺風 冒頭の「報道の自由」は、この個人経済を国がだれにでも、外国人、子供を問わずアクセス権をあたえる制度が土台にある。泡銭や悪銭をウオッチする有益な部分もある。わたしは興味ないが、この制度は報道の自由を護るほかにも、民主主義の要素たとえば政治家がイバレない社会につながっているのではないか。残してよい遺風とおもう。(了) △お知らせ 明日、日本に発ちます。今回は色々調べものをするのが目的で一ヶ月ほどおります。私的趣味に没頭するなんちゅうのは退職者にできる贅沢というもの、なにも疾しいことはない。文句あっか! 帰ってすぐ伴侶の命でオスロの娘夫婦の引っ越しを手伝いに行かねばなりません。こちらは退職ジイにお呼びがかかる貧乏クジであります。故にコラムは一ヶ月、休んでやろうかと思ったり、ま、とびとびにアップできるでしょう。実は今回、アフガン再選挙の件でホルブルークをコケにしてジョン・ケリーに手柄をもたらしたオバマのやり方は汚く弱腰、カルザイを誉めておいて、選挙がおわるまで無為の正当性を作った。そんなことを書きたかったが、トランクの荷造りして−−寝る時間がないぞ。
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