安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
パキスタン最高裁、ムシャラフに報復か
------------------------------------------
〈 2009年 7月 28日 火曜日 )


このコラムは去る23日に送ったつもりで休みに出かけ、月曜27日肌寒いベルゲンに帰りました。旧聞になりましたがムシャラフの証人喚問が行われる水曜日までまだ日がある。以て棄てずイキにしておいて、明日からまた常態にもどります。


●判事たちの季節
パキスタン最高裁が前大統領ペルヴェス・ムシャラフを喚問すると決定、来週水曜日に出頭するよう通知した。喚問は2007年最高裁長官チョードリ以下
多数の最高裁判事を解雇、入れ替えて厳戒令を敷いた件に就いてである。なぜ判事たちを馘首したかというと、ムシャラフが憲法にしたがって議員投票で大統領再選をやるというので、チョードリらの最高裁判事たちが軍最高指揮官の地位を保持したままで行うのは違憲との見解を明らかにしていたからである。そこでムシャラフが最高裁人事を入れ替えて合憲にしたわけだ。

大統領と軍の最高指揮官を兼任し、盤石の権力基盤を持っていたムシャラフは政権を去ると何がおこるかわからない。ロシアなら次の大統領と暗黙の了解が守られ、フルシチョフからエリツィンまで引退後は政治に関与しない、一切口出ししない条件で訴追されることはなかった。

●独裁者の過信
ムシャラフは独裁だったが恩赦、逮捕取り消しをやってメナヒム・ブットの帰国を許し(暗殺されたが)亭主の現大統領にまだ残っていた収賄容疑を取り消した。独裁者は民衆の支持を過信する。選挙に負けて与党は数えるほどのボロ負け、余生は静かに暮らすことでザルダリ新大統領と暗黙の合意があった。それを信じて2008年8月大統領を辞してからこれまで亡命せず常識のワク内(政府批判しない)で自由に発言してきた。

しかしザルダリなど当てになるものですか。今年3月には馘首された判事全員の復職を要求する大荒れのデモがあった。ムシャラフは首相にギラニを任命しておいたのだが、大衆的デモにギラニが折れ、もちろんザルダリも折れて判事たちが戻ってきた。あとはどうやっカタキを撃つかです。いろいろ曲折があり、ムシャラフ安泰かとも思われた矢先、法廷喚問、日本で言えば参考人証言ですが判事たちの考えはとうに決まっている。憲法違反の罪は免れない。

●ムシャラフを裏切ったアメリカ
ムシャラフは米の支援があってこその政権だったが米の言いなりにならないイヤなやつと憎まれてきた。虫酸のはしるやつでも99年、ムシャラフに転がり込んだクーデタ以来の同盟ではないか。それなのに米のR.ホルブルーク(パキスタン−アフガニスタン特使)が20日コメントした「ムシャラフは過去の人、米は彼を擁護しない」。しらじらしいご都合主義。この人はソフトにことを荒立てずに処理する戦場外交の天才、バルカンで見せた仲介の冴えは衰えていない。キアニ将軍とザルダリにワジリスタン総攻撃をやらせておいて米は表面に出て来ない。こう言った「ワジリスタンの軍事作戦をお願いした事はまったくありませんThe US never called for launching a military operation in Waziristan.」
 
この作戦で100万の国内難民をつくって、いったい何人のタリバンを排除できたのか。(了)



フルーツメール



Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る