安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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インドの買い物に歓心を買うアメリカ
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〈 2009年 7月 21日 火曜日 )


●天上天下唯我独尊のインド
インド映画が娯楽一辺倒で架空の社会イメージを華やかに映し出すが、現代政界をテーマにしたものがない。階級社会インドの政治は上層部が独占して流動性がない。絵空事が描けないからだろう。インドは武力で植民地化されたが、独立後はネルー以来、上層部の指導者は自説を曲げず外交で譲歩しない国、西側から見れば煮ても焼いても食えない難しい相手なのである。

独立後、軍事的には脅威の中国,小煩いパキスタンを睨んで軍事大国を目指した。そのためロシアが戦略的に軍事援助をおこない、ミグ戦闘機を提供し、ミサイルを与えた。しかしインドから全然感謝されず、一度も優遇に値する外交関係を持てず、ウマミを得られないまま今日に至った。現在のインドは経済力ができたので援助は要らない、諸国から良い品物を買ってあげようという態度です。

●軍事大国インド
インドの民はいまでも中国が攻めてくると漠然と思い込んでいる。以てその軍事費たるや中国の影に隠れきれないほどのびている。今年,来年は国家予算の20%を軍事費に使う勢い。ロシアの旧兵器では近代戦をたたかえない。戦闘機は何を買おうかな、ロシアは新型ミグ-35、英独伊西が協同でつくったコンソーティゥム(合作の意)、協同から脱会したフランスは尾翼のない△翼のダッソー・ラファール(疾風の意)、スウェーデンはサーブKAS-35グリーペン(掌握の意)の売り込み競争をインドは大いに楽しんだ末、米ロッキードかボーイング社の戦闘機がよさそうだ、現有のミグを一部処分して126機ぐらい米の多目的戦闘機を買いましょう。なんて言い出して暫く立ちました。

クリントン国務長官が日曜からニューデリーを訪れている。この話に道筋を付けるのがひとつの狙い。米がミサイルや戦闘機などのハイテク兵器を売るときに第三国に漏れないよう技術セーフガードを取り決める慣習ですから、この部分はいいとして、インドが米から導入を決めた原発プラント2施設輸出の条件がやや問題を孕む。インドは既に核保有国でNTP(核拡散防止条約)加盟を拒んでいる。ブッシュはそれを追認するかたちで米印原子力協力協定を昨年締結した。

今回オバマはクリントンを派遣して民生用原子力分野での法整備を話し合う。民生用といえNTP条約加盟は,核を持たないNTP批准国の必要欠くべからざる要求である。もっともわたしは実効力のないこの条約などどうでも良いと思っている。しかしNTP加盟によって生ずるIAEAの査察や、技術移転を阻むと称して米側の立ち入った屈辱的監視にたいして譲歩しないインド人が同意するだろうか。

最後はオバマといえ米側が売りたい気持ちに負けて譲歩するだろう。景気のいい展望を開く大型商談をしゃにむに実現したいハズである。WHは東芝の傘下にあり、GEは日立と提携している。日本企業にもおいしい商談が待っている。

●失礼な言い返しにと惑うクリントン
12月コペンハーゲンで開かれる環境会議で京都議定書に代わる目標値取り決めを行う。ここでオバマがいいとこ見せて主導権を握るためにCO2削減目標値をインドから引き出したい。クリントン訪問の狙い二つ目はインドに削減目標値を決めてもらいこの分野での国際協調を促すことである。代価エネルギーやエコカーの開発など経済発展にも繋がると説いたようですが、並んで記者会見に臨んだラメシュ環境大臣は「われわれは規則で義務づけられる削減目標値をだすような立場に単純明快にありません」ズバッと言いました。あいそもへちまもない。かつてオバマがイスラエルのネタニエフに記者の面前でピシャリと反対さる場面があったが、今回はクリントンが国際的には無名のインド環境相に痛い目にあわされた。それでもってにこやかに握手を求めたラメシュにクリントンが一瞬戸惑う写真。ほんとは差し出した男の手をピシャっとやりたかったでしょうな。ロシアも中国も食えなかった印度、米もまた手こずるだろう。(了)



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