安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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遠のいたセラヤ復帰
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〈 2009年 7月 2日 木曜日 )


● ホンジュラスの民主的なクーデター
ホンジュラスのクーデターは5日目になっても情勢はなお流動的、追放されたセラヤ大統領が帰国できるかここへきて不透明になった。追放されたコスタリカからその日のうちにTV/ラジオで「クーデターは民主主義の危機」と放送してしばらくはその効果があったのか、セラヤ支持のデモ隊と軍、それより怖い治安特殊部隊「コブラ」と烈しい抗争がありましたが、2日後に暫定政権支持でセラヤ解任に賛成する静かなデモが帰国予定日が首都Teguncigalpaの広場を埋め尽くした大群衆を見ると、様子がちがう。南米

国会議長から法規に従って横滑りしたミチェレッティ暫定大統領が、国民の90%の支持を受けていると豪語するのを真に受ける訳ではないが、どうやらセラヤの人気は麻生さんより悪い。麻生さんは自分が首相を続けるために憲法改正なんぞしたくても不可能ですが、セラヤはそれをやった。一期4年に限定されている大統領任期を二期まで延長する、つまり憲法を改正することになる。これがホンジュラスの最高裁で違憲とされ、それでもセラヤは任期延長案を取り下げないので、最高裁が逮捕例を出した。これってとても民主的だと思いませんか。

●南米左傾化の三羽がらす
ヴェネズエラのチャベスが憲法改正して現在二期目、思い出せないが南米ではもう一人同じ事をやった大統領がいる。だからセラヤも同じ事が出来ると考えたのかもしれない。キューバのカストロは終身大統領で、病気になった故に弟のラウルに譲ったが、ラウルも終身大統領制を引き継いでいる。南米チャベス、ラウル、セラヤは南米左派の三羽がらす、国際社会に対する三ツ矢なのである。チャベスはセラヤを復帰させないならホンジュラスに軍事侵攻して暫定政府を転覆をすると言いましたもの。この人ならやりかねない。

ま、チャベスも軍事クーデターで拘束されたが軍の内部分裂で復帰したので、盟友が軍事クーデターに遭えばそりゃ感情的になるだろう。しかしその後のチャベスは軍部を完全に掌握し強権独裁を強化、再選制限を撤廃する二階目の憲法改正の国民投票で54%を制し、チャベスは終身制の基礎を固めた。ホンジュラスには同じ道を進んでもらいたくない。チャベスは2030年ぐらいまで、元気な間は大統領に留まる積もりらしいが、そうはいくまい。強権にはおのずと寿命がある。崩壊するのはイランが先かヴェネズエラが先か、選挙ではどちらも都市部で負けている。

セラヤ(Manuel Zeraya) は太いヒゲと顔つきから牧畜と山林を経営する典型的な地方の金持ちガウチョ(南米のカウボーイ)である。ホンンジュラスはメキシコ湾と太平洋側にも港を持つ要地だが資源がない。コーヒとバナナから脱却できない産業不発の貧しい国だ。南米では地方の現地人が大統領になると必ず左傾化する。ボリビアが典型的だが、アメリカでもピーナツを造っていたカーターは就任してから左傾化した。

●ホンジュラスの軍部を説得できなかったアメリカ
さて、セラヤはチャベスの援助で国連に行って演説し、クーデター非難決議をお土産に貰った。オバマは危険な国際政治にはイニシアチブを渋りますから、今回も民主主義の金科玉条にクーデターは正しくないと声明のみにとどまっている。実際問題として米はこの地域に影響力を失って久しいこともあり、今回もクーデターを数日前に察知し、止めるよう軍部とその支援者である裕福な企業家に介入したが失敗した。オバマは米州機構OASにオンブに抱っこである。「OASが4日までにヤラセを復帰させなければOAS加盟資格を停止する」と迫ったが、これは西側からの経済制裁を意味する。

●妥協を示唆するセラヤだが
むしろミチェレッティ(Roberto Micheletti)暫定政権に打撃となるのは:
 ○ チャベスが石油供給を停止
 ○ 隣国のエル・サルバドル、グアテマラ、ニカラグアが交易停止
であろう。しかも変わって石油や市民レベルでの交易に代われる国がない。中国とロシアはチャベスが大事、アメリカはクーデター政府を支援するわけにゆかない。何時の世も資源のない国は見捨てられるのですね。

現時点ではセラヤが妥協の意志を神妙に:
 ○ 大統領任期延長改憲案を取り下げる。来年1月の任期まで努め、そのあとは故郷へ帰ってガウチョをします。
 ○ クーデターに関与した軍幹部の処分はおこなわない。
一方、ミチェレッティは
 ○セラヤが帰国すれば即逮捕、犯罪者として裁かれ刑務所に送られる。
 ○ 暫定政府は今年11月に大統領選挙を行い、1月から新政権が発足する。自身は大統領選挙に出馬しない。
 ○ セラヤが壊した経済の立て直しに米欧の支援を切に求める。
この最後の願いがダメとなれば、リッチビジネスは国外に逃げ、ミチェレッティは万事窮す。セラヤが復活しホンジュラスは低迷する。(了)



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