安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イラン抗争のシンボル「ネダ」
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〈 2009年 6月 22日 月曜日 )


●強権に立ち上がったイラン人
先回は金曜ハメネイの演説を受けて「抗議デモはしばらく見合わせ」と書いた。それがどうだ、過激な抵抗が始まった。催涙ガスと放水車が初めて出動、軍の治安部隊が数千人テヘランに自動小銃を持って出動、発砲許可を受けている。群衆に混じったミリシャが私服で狙いをつけて殴り掛かり逮捕する。戦車こそ出していないが、そういう相手によく女性も立ち向かってゆくのですね。予想外だった。下記のように、デモはポシャルと読んだアマチュア小生の如きプロがたくさんいたのですな。

土曜日、外国記者が自宅待機、報道禁止となったため電話取材と携帯フィルムの音無し映像に頼るのだが、朝からネットに入ったひとつの映像、おそらく数千人の群衆が街路を埋めている映像を巡ってイランウォッチャーの分析が割れた。信じられない、ハメネイ警告のあとにこれほどの群衆はありえない。これは金曜以前のデモ映像という評者、いやちがう、以前のデモにある抗議の旗もプラカードもない、あきらかに反撃を受けない為の集まりだ。動かない静かな群衆の不気味な映像は一分足らずなので判然としない。

しかし、後で明らかになった事実は、3000人の群衆の先端で学生集団が群衆と離れて治安軍と衝突、投石、火付けで攻防があったのだ。車を燃やし、モスクを焼き払い、西側の挑発ヤングと変わらない。政府発表は「テログループとの衝突で13人死亡、100人が病院に運ばれた」という。テログループの焼き印を押した。実際の死者はもっと多いだろう。

●Neda Soltani 16歳の女学生
日曜日に父とデモに来ていた16歳の女性が首下を打ち抜かれて倒れたシーンがユーチューブを通じて西側に流れた。
携帯の動画でその場にいた者が撮影したのであるが、この女性「ネダ」は今後打倒イスラム革命政府のシンボルとなるでしょう。

さてイランの宗教軍政が仮面をぬいで本格取り締まりの緒に就いた。ハメネイの仇敵ラフサンジャニの家族を逮捕して仇敵の活動を封じたこの手法はマフィアが捜査主任の家族を誘拐する手とおなじではないか。アフマは英米が後ろで手を引いている趣旨の演説をおこなったがこの手は不満を外に向ける専制の常套手段である。すでにBBC記者は国外追放を受け、駐在記者のレポートは間接取材しかできない。それでもTwitterやFacebookなど誰でも携帯から相互交信して世界中に流れるので記者などいなくてもニュースは十分入る。いい時代になりました。

●若年層が大多数
日曜日はますます女性子供が増え、群衆規模は衰えない。イランは70%を30才までの若年層で占めており、この層の失業率は20%を超える。テヘラン大学は卒業試験を延期するハメになり、いつでも街に出られるフラストを抱えた若年層が多い。彼らの要求に中世的宗教政体は答えをもっていない。

ともあれ、イランのハメネイ体制は先週を最後に孤立した。国際社会から批判が続出、ハメネイが譲歩するか、市民殺戮に走るか、このままでは再選挙で終止できるか疑問。かといって選挙法を変え、政教分離を通すのは時期尚早だ。混乱から何が生まれ、何が死ぬか、黙してフォロウしよう。(了)



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