●不幸のはじまりか、オバマ救世主になるか
GM破産にともない、ヘンダーソンCEO の説明記者会見とオバマ大統領ががサマーズほか閣僚や、経済チーム面々を従えての短い声明を聞いた。ヘンダーソンはソフトで誠実そうな実務派、クビにされたワゴナーのようないかにも豪腕で切れ者の感じがないスリアワセの人のようだ。４月末、こんなリストラ計画じゃダメ、60日の猶予をあたえるから出直してこい、とオバマに尻を叩かれた。以来、オバマ経済チームと一緒か、言われるままか知りませんが、債権者およびUAWコツコツ交渉を重ね、案外早く合意に到った。UAWが2015年までストライキしない条項にOKしたのにビックリ、ロシアみたいだなあ！

わたしは２月にめでたく破産がよいという意見でしたが、オバマはGMに200億ドルを酸素注入して活かし、事前調整をすませて無事チャプター11（民事再生法にあたる）にもちこんだ。これが不幸の始まりか、成功してオバマが神さまになるか、いまはお祝儀に黙っておきますが、昨年11月のコラム「ビッグ３救済、オバマ失政のはじまり」で、次のように書いていました。

＞いくらビッグ3に資金注入したって、車が売れなければあとが続かない。破産をわずかに先延ばししても意味がない。車の販売台数が1年前に戻る時代は遠い先ですから。支援を止めて、たとえばGMが潰れればビッグ２は息を吹き返すだろう。向こう2年間の回転資金を持つフォードは、GM破産を望んでいるみたいな記事がtime.comにありまし."If Congress doesn't pass an auto bailout plan, Ford could actually prosper by not failing."　トヨタもおなじ想いだろう。＜

●神通力を失ったオバマの演説
しかし、オバマのTV声明は「私としてはやりたくないんだが、無為に見過ごせば更生不可の破産清算になる。そうなれば経済は大打撃を受けとくに中西部の州はバラバラに壊滅されるだろう。そのうえリセッションにどっぷり浸かっている現在、米経済全体に波及し崩壊に到る怖れがある」。えらいここっちゃ、この箇所はオバマがこわがりなのか、衆人への脅しなのか、多分両方だろう。「私はカーメーカーの経営はしない、したくもない」。とはいっても60％の株を保有する国営自動車会社にするのだから責任はとってもらいましょう。

「GMは苦境から早急に再起し……」というところはあいかわらず超自信にみちてオバマらしい。解雇される人々に向かってオバマが言う。「この困難なとき、あなたは人一倍の苦労を強いられた。それは次世代への犠牲であることを知ってほしい。あなた自身が選んだのではない犠牲ではないのだが、あなたの子供たちやわれわれの子供たちがモノ作りの国アメリカで育つ、そのための犠牲なのだ」。どうでしょうか、食傷気味というか、無心に評してもインスパイア神通力は弱まったようだ。

●リストラ救済に計500億ドル、返済の見込み？
GMのヘンダーソンがリストラの大要を説明したように、採算のあうベスト４ブランドを残して国際的にはトップから５位の規模に縮小する。国内ディーラーカットはまず３分の１の2000店以上、来年中に3600店を切り離し10万人削減。米各地の工場封鎖により従業員２万人を解雇する。カナダとメキシコを含めた北米全土で173.000人いるが、メキシコでの人員整理がどれくらいの規模になるか、メキシコ記者の質問に明確な人数を示さなかったGM欧州傘下のドイツ・オペル、英・ヴォグゾール、スウェーデン・サーブに対しては、法的オウナーを外したので米本社の破産適用をうけない。いまのところオペルの買い手がきまったくらいで、まだまだ紆余曲折があるだろう。

ここまで縮小しておいて、さらなる株取得の追加融資などに300億ドルの税金を使う。融資額が返済される見込みはあるのか、オバマは返ってくるというがそれは何時ですかと訪ねても返事はない。政府派半年から１年半で上場返り咲きの希望があるようだが、計画通りにまいりますか。いまは黙っておく。

●キャデラック
おもうにキャデラックはほそぼそやっていける。まじめな話、これがなかったら映画界やロシアや結婚式から葬儀屋さんまで困りますから経営は大丈夫成り立つ。他のGM３ブランドを救う事は即ちクライスラーを危うくし、フォードに迷惑をかける。オバマ曰く：GMが潰れたら米経済が崩壊するやも……。アホラしい、GMがなくてもオバマがいなくてもアメリカは潰れません。（了）

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Pnorama Box制作委員会

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