安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イスラマバードに迫るタリバン 
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〈 2009年 4月 23日 木曜日 )


●弱いザルダリと腰がすわらないキアニ
パキスタン、ザルダリ政権がタリバンに戦いを挑んだものの町や村をそのうえ一般住民に被害が拡大したこともあって、休戦協定を結んで北部辺境州から退却した。この協定はタリバンがスワト谷一帯をシャリア法で統治することに同意して成立、それが今年の2月だった。タリバンとシャリア立法は一心同体ですから、民主的な自治を条件に持ち出せない。ザルダリも軍最高司令官のキアニもぜんぜん腰がすわっていません。

スワトを掌握したタリバンは南下してブネルBuner地区も指揮下に治めた。ここから首都イスラマバードまで100キロ足らず、タリバン兵が数時間で達するところまで接近した。休戦協定にはタリバンが武器を放棄するという条件があるが、そんなオトギ話を承知した上での協定だから、タリバンが勢力範囲を拡大することは、自明の理だった。

●士気のない軍に戦略なし
ザルダリ政府、キアニ軍部ともどもどうやってタリバンに対峙するか、確固とした意志があれば対策、作戦がたてられるとおもう。要するに意志がもてないほど国のあちこちで情けない状況にある。いまパキスタンは最低の経済、IMFに助けてもらって,また日本での支援者会議で多額が決まったことで一息ついたところだ。北東部カシミールではインドとあいかわらず睨み合い、中傷合戦はムンバイ事件を機に続いている。しかもここへきて南部の商港をもつバルチスタン地方が自治の動きを見せ始めた。

ブッシユ時代にはポンと軍に用途を問わずに大金を振り込んでいたが、お金が何処へ消えたかわからないような支援はできない、とオバマが注文をつけた。いいことなのですが、ムシャラフ時代によく働いたキアニ将軍はヤル気を失ったようにみえる。

●最悪のシナリオ
最悪のシナリオは、タリバンの攻勢が首都周辺の州プンジャブを掌中に収めること。パキスタンの経済、産業、農業の中心地で国家指導層はこの州出身者で占められている。つまり、プンジャブを支配する者はパキスタンを支配する。世界第5の人口(17500万人、高い人口増加率)を有する大きな国、核兵保有国であり、アフガン・タリバンの聖域がタリバンの手に落ちる。このシナリオは危惧に過ぎないのですが、いまパキスタン市民がやっと反タリバンに積極的になった要因はここにあるだろう。音楽やクリケット厳禁、女性は教育無用でブルカ使用、耐えられんわな。

●パキスタン米軍事介入はありえない
さて、アメリカは、クリントン長官が水曜日の議会証言で事態の重大性を説いたが具体的な対策はない。パキスタンの反米はイラクより烈しいため、直接介入は逆効果、米の存在感をさけて軍部に戦略と武器両面ではたらきかけるしかない。アフガニスタンとパキスタン政策を担当する適任最高の人材であるリチャード・ホルブロックに期待をかけています。

最後にタリバン評論の双璧が今週TVに出ていました。発言例。
Peter Bergen:不安定なパキスタンはアフガニスタンより危険。
Ahmed Rashid:土壇場でにパキスタン国民が反タリバンに立ち上がるだろう。(了)



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