安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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クラナッハ盗まれる
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〈 2009年 3月 9日 月曜日 )


当地ノルウェーの話題です。
●大漁ニシン、輸出に立ちはだかる金融収縮
先日ニシンが今年は面白いほど大漁であったこと、殆どが東欧、ロシアやアフリカに輸出される事を書きました。ところが輸出が思うように進まない。というのは輸出先がいずこも特に経済が悪化している地域で支払い不履行になるおそれが大きいため、輸出業者はいつもなら銀行が出してくれる保証が受けられない状態。踏み倒されればそのままだ。金融機関の貸し渋り、クレディット・クランチはこういう所にもしわ寄せが来ている。

●年金ファンド(石油基金)
政府系基金、国富ファンドと言っても良いのですが、ノルウェーの場合は国内と国外の2本立てになっており、「年金ファンド-ノルウェー」と「年金ファンド-外国」がある。前者は以前の社会保障財源、つまり国民の収入から徴収した積立金で、厚生省が資金の50〜70%を株などに運営する。投資部門の責任者は女性。後者はオフショー石油権益の上がりを財務省が運営し40〜60%を株や為替取引に回して財テクする。オスロ、ロンドン、ニューヨーク、上海に事務所があり24時間態勢でトレードしている。外国部門の責任者は男性。

さて、株安と原油安のダブルパンチで年金ファンドはどれくらい減ったか、他国の政府系ファンドにくらべれば軽傷ですんだといえるのではないでしょうか。2008年の結果は4分の一減少。評価額は約1650億円から1230億円に目減りした。最大の評価損はノルウェー株による。ならばあまり文句も言えません。年金ファンドの損益で野党(保守党系)が政府を批判する様子はかけらもない。原油安については、北海原油45ドル/bの昨今、この価格でも原価割れしていない、それほど生産の自動化が進んでいる。

●クラナッハ盗まれる
日曜日の真夜中1時半、ラーヴィクの教会からクラナッハの絵が盗まれた。夜は無人、近くに教会守りというか日本の寺男にあたる人が住んでいて、市販のアラームはここに通じている。保険は掛けられていない。教会側は盗難より火災が最も懸念されていたため、消防署との約束として火災時に運び出す優先品に指定されていたという。教会守りさんから2度目の通報を受けて警察は事件の20分後に到着、そりゃもう遅かった。

盗難にあった絵は聖壇に飾られたものではなく、壁にかけられていたルーカス・クラナッハ(父)の聖画「幼な子よ吾に来れ」である。額とガラスを打ち砕いて画布を持ち去った。教会は国教教会だが、維持費は地方自治体がもつ。売りに出せば鑑定額およそ2億円だが、そのように高価な物品を特別に保険に掛ける余裕は小さな自治体にはムリだ。

この「幼な子よ吾に来れ」はクラナッハの工房で8枚制作された。注文の多い売り用の作品のせいか、不気味でグロテスクな真実をえぐり出すクラナッハではなく、万人に好まれる表現はやや平坦である。美術品市場で売買できる



この絵は330年のあいだこの教会の内壁に架けられていた。オスロの国立美術館でクラナッハを見たが、地方の教会にこのような大作(約1メートル四方)があるとはまったく知りませんでした。ラーヴィクはオスロの南、オスロフィヨルドの入り口東側に有る港町である。中世から欧州本土へ材木を運び出し、帰りには織物、小麦、ワインなど諸々の文化品を積んで回航した。またクラナッハとマルリチン・ルターとは昵懇である。そのためだろうか、ドイツ宗教改革の影響でカトリックからルター派に改宗した北欧にクラナッハの絵が運ばれたのではないか、これは私の勝手な推測です。

とまれ有名すぎて美術品市場で売買できるクラスの盗品ではく、盗奪を注文する背後がいるとは信じられない。強奪されムンクの「叫び」はならず者の仕業でした。当然買い手がみつからずギャングの仲介で無事戻ったが、手荒な扱いで損傷がひどかった。クラナッハを盗んだのも盗みの常習犯か、いまごろどうしたものか途方にくれているだろう。(了)



Pnorama Box制作委員会

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