安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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日本、政治家と言葉
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〈 2009年 2月 14日 土曜日 )


麻生首相が郵政民営化の見直しに触れた発言から、小泉発言で自民党に激震、ショックの余震続くなどと侃々諤々の頃……。日本の政局を『前から鉄砲を打つ』がごとくコメントできる素養は小生にない。本題からそれますが、ネット記事やヴィデオニュースを見ると、日本の政治家は難しい言葉をつかいますね。

●難しい漢語がお好き
一例をあげると『拳々服膺』。「けんけんふくよう」とこの四字熟語を入力するとイッパツで正しく変換される。ということは使用頻度が高いんのでしょうか。教育勅語の言葉だからでしょうか。但し、胸を叩く感情表現は古来日本の風土に一般的ではなかったため、文字から意味が類推できる熟語ではない。使いにくい言葉です。

文語を引用するのはリバイバルなのでしょうか、麻生首相最近のメルマガの出だしは:
「邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん事を期す。」
(明治五年 太政官布告第二百十四号 抜粋)
と、国民皆学の精神を説いておられる。本文で説くところはしかし平々凡々で、そのため頭を文語で衒う必要があるのだろう。因にこのメルマガの出だしは英文メルマガで: 
"It is expected that there is no household in a village, nor anyone in any household who has not had an education."
たちまちふつうの文章になってしまいます。オバマなら表現にもっと気の利いたレトリックをつかうでしょう。

●『叱咤激励』
これは難しい言葉ではありませんが、ヒネクレた物言いである。叱咤するのはよい、激励はする方され方嬉しいことです。だが両方込めるとウソの匂いがする言葉でわたしの嫌いな言葉です。『愛の鞭』もこの二律背反のジャンルにあり、その先には体育部のしごき、相撲部屋の体罰に行き着く。

英語で『叱咤激励』を、辞書で引いてもピッタリの英語はない。Yelling Spurs あるいはReprimand and Encourage とでも言うか、小泉発言を『叱咤激励』と受け止め……云々は、論議をしたくない場合、終止符をうつ便利な使用例。政治議論にはできるだけ使われたくない言葉だ。

●渦中の財務大臣
財務大臣が渦中の人、麻生総理を前にして本会議で演説、『渦中』をウズチュウとお読みになった。就中、歳入を歳出と言い、63兆円を63円、7兆4510億円を7兆4050億円と読み違えたという。そもそも役人の書いた原稿を棒読みする悪習は卒業してもらいたい。米財務大臣ガイトナーは30分滔々と、原稿の束を一瞥だにせず財政出動の詳細をぶちあげたことは先のコラムで述べた。

財務大臣閣下に「渦中の栗」と書いた原稿を渡すと、閣下は正しく「カチュウのクリ」とお読みになり、それが誤記であることに気がつかれない…失礼ながらさような邪気が湧きました。

さて「テメエの誤字と間違いだらけの作文を棚において」と読者は難じておられるだろう。小学平民 真摯に叱咤激励と受け止め 拳拳服膺して正語真文を一にせんことを請い願う。(了)

余談:小泉元首相の影響力におどろく。ブレアがブラウンに苦言すれば政府も国民も拝聴しておわり。シラクがサルコジに苦言すればブーイング。シュレーダーがメラケルに苦言すればアンタまだいたの。ブッシュはいつかオバマに苦言するだろうが、影響力はゼロ。中国の元主席、韓国の元大統領は何も言わせてもらえない。素晴らしきかな日本の国は。



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