安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ガザ市民への義務を放棄したハマス
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〈 2009年 2月 4日 水曜日 )


●市民を助けないハマス
通りの両側に破壊され瓦礫のうず、呆然とたたずむ住人。病院に担ぎ込まれる子供・女性の悲惨な様子が繰り返し映し出される。だがハマスはどこにいる?戦争の前には覆面ユニフォーム姿でロケット砲を担ぎ行進するハマスの正規軍や、イスラエル打倒を叫ぶ民兵、カチューシャを発射する男たちは見慣れたすがたであった。

どの国でも戦争に備えて軍、警察が指導して避難訓練をする。日本ではなぜかやらないが消火訓練や地震に備えた予行演習がある。災害がおこれば自衛隊がかけつけ救助犬もやってくる。それがハマスの支配するガザ地区ではまったくないのだ。民間人の避難を先導することも瓦礫の残骸を片付けたり、民間負傷者を救助することもない。そういうことは民間人と国際支援が100%の救急車の仕事であり、ハマス兵が市民を救援しない理不尽にガザの市民は目をつぶる。ひたすら爆撃を非難しイスラエルの非人道に怒りアッラーの加護に縋るが、指導者への不平を漏らすものはいない。

ガザを掌握しファタハを追い出したハマス指導部は、1年の停戦期間にイスラエルとの非公式チャネルを通じてイスラエルが西岸と通商しているように輸出入の再開などを協議できたはずだが、もっぱらファタハとの抗争にあけくれ、有効な社会政策を怠った。全ては不倶戴天の敵・イスラエルへの憎悪を偏狭な民族ショナリズムにすり替え、市民が抱く懐疑、なぜ生活がよくならず職がないのか、指導部の財政はどこから入りどこへ消えてゆくのか、といった内に向かうべき正義は外敵イスラエルへの復讐に燃え上がるのである。

この執拗な民族ナショナリズムを維持するためには常時、肥料を与えなければならない。停戦後のいまもロケットをイスラエルに打ち込むのはそのためだ。10倍で報復されてもかまわない。むしろハマスの思うつぼだろう。こうして報復のスパイラルが再生される。

●イスラエルの爆撃前警告
この戦争はイスラエルがレバノン深追いの失敗に懲りて、逃げて隠れてしまったハマス武装兵を探索することなく撤退した。イ米関係に照らし、オバマ就任にきまり悪い戦争を終わらせることができた。空爆と地上攻撃は前もって警告を何度も発していたことから先制攻撃とはいえない。空からビラをまいて近い爆撃を警告、なかには住民に電話で「これから地上軍がそちらに侵入する」と避難勧告したり、携帯に警告メッセージを送るケースもあった。古今の戦争史上初めての警告コレスポンドである。電気が通じていればPC警告も使っただろう。ガザ市市街地40万人のうち、電話や携帯は無数にある。モサドの諜報能力恐るべし。

しかし前述したように避難・疎開を先導すべきハマス兵がわれさきに逃げるようでは警告しても無益、また避難した学校やモスクからロケットが発射されれば当然報復される。密集地帯では誤爆もある。市民の楯となる武装兵が市民を楯にする「因循姑息」なゲリラ戦法に人道的な攻撃で報いる処方箋があるだろうか。イスラエルの人道的爆撃予報は不徹底、単なるエクスキューズ措置と批判されるが、その努力は認めたい。

●ガザに大きな国連施設があるゆえん
国連はガザ市内に難民救済人道支援の大きな施設をかまえ、あまたある世界各地の国連機関の出先のなかでも傑出した仕事を遂行している。事務所所長のジョン・ギングは政治に口出しがすぎるのでは。わたしは賛成しかねるがあっぱれな人権擁護のスポークスマンである。

ここで、なぜガザに国連事務所があり、崇高な任務を果たしているか、いや果たせるか。それはイスラエルが了承し、施設の安全を保障したからである。ま、物資保管庫に誤爆はあったが。国連が事務所をおけない国、また職員を追放する国は決して少なくはない。北朝鮮やミャンマー、BRICSの数カ国など。チベットもそうだ、中国がゆるさない。そう考えると、イスラエルは決して非道な国ではない。西岸の壁、青天刑務所といわれるガザ封鎖にはそれなりの理由がある。イスラム民族主義者には通じないが、せめて人権派諸姉はイスラエルのパラノイアと決めつけず、イスラエルの「なぜ」を省りみるべきであろう。

●イスラエルが使用した非人道白リン弾
空爆初日から空中で100発くらいの子弾にばらまかれて箒状に白煙と白光を引いて降り落ちる映像をエキスパートが分析していろいろウンチクをのべ、当地の新聞にも詳しいグラフィック付きの解説が開戦から3-4日目にでていました。酸化して燃えるリンに消化水は役に立たないといわれ、リンの残滓が人体に付着すれ水をかけても消えず、筋肉や内蔵を焼き尽くすナパーム弾のようだという。だが、当初の報道では白リン弾がクラスター弾のような多くの不発弾を残さず、禁止化学兵器に属さないとされた。それだからイスラエルが使用したのであり、日本も昨年署名批准したクラスター弾禁止条約によりこれが使用されていないことを喜ぶと、いつかコラムに書いた。うかつだった。約800発使われた白リン弾のうち20発ほどが市街密集地に落ちた。クラスター弾禁止条約については米露中イスラエル印パなど最も使いそうな国が署名していない。だが実質的には非署名国も使用不可能にする効力を証明した。白リン弾が対人禁止兵器に指定されることを望む。

余話:我が家の庭の隅に焼夷弾が転がっていたのを覚えている。不発弾なのか燃焼済みなのかしばらくあったようにおもう。ときは1945-6年、ところは爆撃がないといわれた奈良市の興福寺、東大寺近くに越してきた借家だった。空襲警報のサイレン、防空壕のロウソクを覚えているので、あの焼夷弾は近くに落ちたものだったかもしれない。(了)



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