● 泡に帰したご祝儀
オバマ就任にあわせて米の２大パートナー、イスラエルとイギリスがご祝儀を贈りました。それはガザ完全撤退と12月に続く第２の英銀行救済資金注入です。しかし株価はこのご祝儀にピクリとも反応せず、ポンドが最低を更新。検問所を開けたイスラエルは、西側の記者のガザ惨状報道で猛烈な批判に曝されるしまつ。ご祝儀は不発におわりました。EUがガザ地区への人道支援を決めたが、ハマス統治下の復興（建物インフラなど）は見合わすと決めたことは殆ど報道されない。実はオバマも就任後数々のスピーチで一度もハマスに触れず、イスラエル攻撃によるガザ復興支援を表明していない。人道支援だけだ。あくまでパレスチナの代表はアッバスに限定していて、ここはブッシュと同じ路線。良きかなであります。

●新たな問題を生むグアンタナモ封鎖
グアンタナモ収容所、海外のCIA収容所を１年以内に封鎖するなど関連する４つの令に署名。まことに正しい大統領令ではあるが、現実的には新しいトラブルを作る難しい作業である。

囚人の釈放と移転および米憲法に即した裁判への道順は１年では不可能です。これまで約500人が釈放され帰国したが、250人残る囚人のうち半数は釈放できるが受け入れ先が見つからない。サウジ、イラン、イエメンなど自国籍のテロ容疑者の受け入れを拒否している。で、残る半数は9.11の計画犯をふくむ危険容疑者である。報告ではこれまで軍事法廷で無罪または刑期終了で釈放された者の11％がテロ組織に戻ったという。

ブッシュの主張はグアンタナモ収容所の囚人は戦犯ではなくテロ容疑者、従って戦犯の人権を定めたジュネーブ協定に違反しないというものでした。法廷審議に弁護士をつけず、裁判なしに何年も拘束してきたのはわたしもヒドイとおもう。しかし米国に対するテロで容疑者を逮捕した国、たいていはイスラム圏だが、それらの当事国に引き渡せば無罪か極刑だろう。民主的裁判は望むべくもない。世間はグアンタナモ拷問に注目するが水攻めなどはTVで見せる程度の拷問であって、しかもメディック監視のもとに行われる。残酷すぎてTV放映規定に抵触するような拷問ではないのです。

●なぜか国連がでてこない
グアンタナモ封鎖は世界に不評な米の信頼を回復するための即効薬となる。これもブッシュが次期政権に委ねた皮肉なご祝儀であろうか。またグアンタナモはキューバにある米軍基地だが、40年経済制裁を続行し、国交のないキューバとの関係に一言もない。せっかく病床の大御所カストロが好意的な感想を述べたというではありませんか。そういえばオバマは初日に中東和平に関係国首長に電話しておきながら、ちょうど中東訪問中だった国連のバン・キムーンには電話をかけなかった。

昨日は中東特使にG・ミッチェル、アフガニスタン+パキスタン特使にR・ホルブロックという最良のベテラン外交官を手堅く任命した。つまり和平は困難で遠いことを認めた人事である。格式張った任命式でオバマ、ヒラリー、バイドンと二人の新特使がスピーチしたが、ついに誰の口からも国連が出てきませんでしたな。就任演説にもUnited Nationがなかった。

●宴のあとのあら探し
オバマがWHに入ってから２日目ともなると、米メディアでもチロチロとあら探しがはじまりました。まず就任式の費用が史上最大、ブッシュ４年前の3倍という。一抹の不安。多くは選挙中からもあるオバマへの寄付金で賄ったといえ、この不景気に良い趣味ではない。

ガイトナーとヒラリーの議会審問の馴れ芝居もそうだ。FRBニューヨーク連銀総裁の税金ちょろまかしなんてのは日本なら辞職、首相の任命責任にひろがります。過失、知らなかったと平身低頭して済まないのですがね。共和党議員から『時間をとりますがあなた、同じ事をグルグル言わないで聞いた事にちゃんと答えてくださいよ』と炙られるシーンが唯一。前のポールソンはもっと焼かれ(be grilled) )ましたよね。

●官僚の給料も握る米大統領
官僚の倫理規定が強化され、パイプ役で公的法人へ天下りするのを禁じた。年額サラリーが10万ドル、今なら900万円の高級官僚なんてさして高給ではないわな。何割ぐらい該当するのだろうか、オバマはこのクラスの昇給を凍結した。こういう事をポンと恣意的に決められる権限が米大統領にあったのですな。日本の首相が同じ事を独断すれば永田町の反乱にあう。政府の寿命はながくない。米の高級官僚は転職が激しく地位に汲々としないので反乱はないのだろう。ところで大統領の給料はカットされないようです。（了）

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Pnorama Box制作委員会

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