安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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激安ガスの供給停止
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〈 2009年 1月 8日 木曜日 )


●雪と寒波、欧州を席巻
ヨーロッパに寒波の嵐、モスクワやキエフは-20度、ロンドンの噴水は凍り、南国マドリッドで-7度といいます。当地ベルゲンは寒くならない土地ですが2日前に-7度という近年の記録的寒さになりました。明日の予報は+7度、この段差も記録的。オスロフィヨルドは湾内全域に氷がはり対岸に散歩するひと、スケートする人、ウバグルマを押し、犬に滑り止めの靴下を履かせて遊ぶ人。マルセーユの街路は積もった雪で車が動かず子供は元気に雪遊び。楽しめるうちはよい。

欧州この雪と寒波で12人が凍死とニュースにありましたが実数はもっと多いでしょう。そんなときロシアがウクライナへのガス供給を完全停止した。ウクライオナ経由のガスに頼るブルガリア、セルビアスロバキアからギリシャまで東・南欧諸国はこの寒波に暖房がナシ、湯も沸かせない。電熱ストーブで細々と凌げる者はまだいい方だ。欧州ではないが、打ちっぱなしのコンクリアパートに住む北朝鮮がふと気になって気温を見ると今夜は-8度。小雪ちらつく北北東の風、風力8km/h、体感温度は-17度とある。将軍さま、なんとかしろよ。

●プーチン、ウクライナへ供給ガス完全停止
さて、ウクライナへのガスパイプ締めは2006年にもありました。欧州への供給を2度とストップする事はありませんとプーチンは約束したけれど、ロシア企業との契約ですからね。2年もったのはいい方です。今回もウクライナと同じ問題、ガス代の支払いをめぐってプーチンが納得せずガス栓の圧力を絞った。

ウクライナが支払うガス代は、オレンジ革命以前の親ロシア国向けの原価割れ価格だった。西側に行くなら正価を払えと言う事になって少しは余分に払い、昨年も値上げで揉めていたが大晦日になってウクライナは全額支払いをすませた。だが、新年の値上げ分にユーシェンコが同意しなかったためその分供給量を減らしたところ、ウクライナ経由欧州行きのガスが減った。プーチンはウクライナが抜き取ったという。ユーシェッンコは否定する。06年と同じパターンである。で、石油ガス価格の暴落で経済が抜きん出て悪化したプーチンはバルブを完全に締めてしまった。

●ユーシェンコの責任
ご存知のようにロシアの天然ガス独占企業GAZPROMはプーチンが作り替えた。前会長に選んだメドベージェフを大統領にしたので、いまの社長ミレルはプーチンが指名した若い人。このガスプロムの仕事に横からプーチン絡みのコンサルタントが幾人もいて価格が上乗せされる。ウクライナでこのコンサルタント業で儲けていたのがティモシェンコ、金髪を紐に編んで円弧状にあげている美人の返り咲き首相である。で、ユーシェンコはコンサルタントたちのピンハネをなくせば値上げしなくてもいい、てな不平を呟いたそうでプーチンがカっと……ま、そういうウワサもある。

欧州主要国のガス消費量はロシアから5分の一、そのうちウクライナ経由が80%である。ガス昨年暖冬でありこのところの不況で消費量が減っていたため備蓄量はフランス129日、ドイツ99日、しばらくは影響ない。イギリスで15日分しかない。ガスレンジ、ガスボイラーで温湯と暖房につかうイギリスは苦しい。ノルウェーオフショーから海底パイプで欧州向けのガス輸出が最大量に増えている。今日からモスクワで交渉再開、EUがウクライナに調査団を派遣する。ガス全面停止は商売より人道上の問題ですから、プーチンは少なくとも欧州向けをすぐ再開するだろう。

●欧州ガス価格の75%引き
ユーシェンコはNATO加盟を望み、米のミサイル防御に賛成し南オセチア紛争でグルジアを支持、領内にある黒海のロシア海軍基地貸与をチラつかせてプーチンと渡り合う綱渡り的手腕は認めるが、そうやって欧州価格の4分の1の値段で売れちゅうのはキツイ、ロシアに同情します。バルト海を経る北回り、黒海を回る南周りパイプラインが100%完成する2年後には、ウクライナで分岐する欧州向けラインの重要度はウンと低下。ユーシェンコの綱渡り外交は破局をむかえるだろう。(了)



Pnorama Box制作委員会

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