安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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『マドフ経済』byクルーグマン
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〈 2008年 12月 22日 月曜日 )


米ではポンジ、欧州では一般にピラミッドとよばれる「ねずみ講」商法で4超4500億円を詐欺したマドフという有名投資家がどうやってここまで騙しおおせたのか、米欧日の大金融業界も騙されたのはどうしてか。マドフ証券が会社グルミでなければ不可能である。

数日前に出たクルーグマン教授の論評はノーベル賞受賞後初めてである。日本のバブルをいち早く警告したクルーグマンは米の金融危機にも警鐘をならしていたが、ブッシュ政府はクルーグマン批判を無視し、また氏は決して必死にならない人ですから衆目の目を開かせる力はなかった。この評論ではではどうしてこうなったかを市民社会に目配りして簡潔に書かれている。賛否は別にして重要な論評とおもうので和訳してみました。

●The Madoff Economy by PAUL KRUGMAN
Published: December 19, 2008


輝かしい投資家と誰もが思っていたバーナ−ド・マドフ、慈善家で地域社会の支柱である彼がエセものであったことは世界を震撼させた、尤もである。ネズミ講で500億ドル(現行為替で4兆4500億円)とは理解し難いスケールだ。

このマドフ氏の物語と投資業界全体の話の違いはどこか、疑問を呈する人は私だけではない。

金融サービス業界は、国民の所得を募り集金を増やし続け、それによってこの業界を動かす重役たちを信じられないほどリッチにしてきた。さらにこの時点に於いて、金融業界は価値を創造するより破壊に回っているようだ。ことはお金の問題に止どまらない、他人のお金を運営して大金を手にした富豪たちはわたしたちの社会をまるごと汚染したのである。

まず給料から始めよう。昨年, 証券や金融商品、投資に携わった社員の給料は他産業の平均給与の4倍あった。年収100万ドルはザラで2000万ドル以上が珍しくなかった。普通の労働者賃金が停滞しているときでもアメリカの富豪層は爆発的に増加、主な原因はウォ−ル街の高給による。

とはいえこれら金融界のスーパースターたちは数百万ドルを稼いだにちがいない、そうでしょう? いいえ、必ずしもそうとは限りません。ウォール街の支払い方法は見かけの利益に対して気前よく報酬を出す。その見かけの利益が後に幻想に終わってもである。

仮定として金融マネジャーの一例を考えてみましょう。顧客の負債資金をレバレッジで膨らませてこしらえた借金による大金を、リスキーだがハイリターンの資産・疑わしい住宅関連債券などに投資したとします。しばらく住宅バブルが続いている間は利益があがり、マネジャーはがっぽりボーナスを得る。で、バブルが弾けると投資は不良資産となり、投資家は大損害を受ける……だがマネジャーは得たボーナス手放さない。

OK、この一例はつまるところ仮定とはいえない現実性があるようだ。

それではウォール街一般とマドフの一件はどこが異なるか? それはマドフが取引のステップをいくつか飛び越したことにある。つまり投資家に説明しても理解困難なリスクを開示せず、莫大な手数料を取るより単に顧客のお金を盗んだことにある。マドフの詐欺は確信的であり、それゆえにウォール街の多くが自ら内在する誇大宣伝の呪縛にかかったといえよう。マドフもウォール街も結果はやはり同じ(自宅監禁以外は);マネジャーは儲け、投資家は彼らのお金を失った。

大金がかかっています。近年、米金融セクターはGDPの8%を占める。前の世代では5%だった。もしこのエキストラ3%が空のお金だったとしたら…多分そうだろう…年額4000億ドルの無駄、詐欺、乱用という問題である。

しかしながらこの〔アメリカねずみ講〕の対価は、ダイレクトな金銭の損失を超えて問題はさらに広い。

露骨に言えば,不正利得に奔走した金融界が腐り果て、政治腐敗にも汚染した…それも仲良く超党派的にだ。金融界の不正証拠が明らかになるにつれ意見を変えたブッシュ政権のクリストファー・コックス証券取引委員長から、ヘッジファンドの役員やプライベート・エクイティーの取扱社に利益をもたらす法外な税の抜け穴をまだ閉じていない民主党議員(ハロー、シューマー上院議員)まで、政治家は金のはなしに動く。

一方、個人的に富を素早く手にする磁力によって、国の将来がどれほど被害を受けることか。ベスト&ブライトの若者が毎年、科学や公共サービスその他の職業にむかうより投資会社に就職していった。

そしてなによりも肥大した金融界でボロ儲けした億万長者は、われわれの現実的感覚を麻痺し、判断力を損ねたのである。

殆ど全ての指導者たちが差し迫った危機の警鐘を聞き逃したことを考えてみたまえ。いったいなぜ起きたのか? たとえばグリーンスパンがほんの数年前にこう発言したム『金融システムは総体的に回復力がある』。デリヴァティヴのおかげ、それ以上でも以下でもない? 私の信ずる答えはエリートの中でさえ富を築く者を偶像視する部分が生来の傾向としてあり、彼ら自身の行動を当然と思っていることだ。

それが結局、多くの人々がマドフ氏を信頼してしまった理由である。

なぜこれほど早く、且つここまで悪くなったのかを理解するため、今われわれは壊れたガレキを調べているが、答えは至ってシンプル:いま我々が見ているものこそマドフ無き後の世界の帰着である。

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筆者後書き:特に新解釈はないが、超党派で政治家に厳しく、グリーンスパン批判は衰えていない。だが、遅きに逸したといえ100年に一度の危機と断言したのはグリーンスパンが最初だったことを付記したい。またマケインは選挙中、大統領になったらコックスESC委員長を監督不行き届きで解任すると発言していた。



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