安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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「21世紀新ニューディール」を疑う
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〈 2008年 12月 7日 日曜日 )


●ビッグスリーに武士の情け
ビッグスリー救済がほぼ固まった。週明けの議会で採決される。初回は「計画書を見せなければお札は出せない」と突っ返したペロシ下院議長とレイド院内総務が、恭順を示したビッグスリーに歩み寄った。340億ドルの要請を150〜170億ドルに値切って融資。年越しのつなぎである。ペロシはまたブッシュが先に決めた250億ドルのグリーン車のための開発支援を流用する案を頑に拒んでいたが、このワクを使うことに同意。これなら共和党の反対が減る。

あとは来年1月20日に就任するオバマ大統領におまかせとなります。就任式には400〜500万人がワシントンに集まるといわれる。人口55万のワシントンは殺到する大群衆で身動きとれないのでは? オバマバブルに狂うのは勝手だが、ビッグスリーへの追加融資は急を要する。で、オバマは米自動車産業を絶対に破綻させない立場ですから、赤字財政を増やしてポーンと振る舞うでしょう。

●「21世紀新ニューディール」5本の柱
11月のあらたな米失業者533,000人という数字が5日(金)に発表された米雇用統計で明らかになった。今年にはいって250万人、いま全米で総計550万人の失業者を抱えている。この数字をふまえてオバマは週末恒例のラジオ声明(ユーチューブでヴィデオあり)を出した。例の大型公共事業に大盤振る舞いする21世紀新ニューディールだが、これで250万人の新雇用を2年で達成すると具体的になった。また支援分野と計画がかなり具体的になった。柱は5本。
@ エネルギー:米政府は世界で最もエネルギー消費が多い。省エネ冷暖房に交換し省エネ電球に変える。
A道路と橋梁:50年代にアイゼンハワーが全米ハイウェイシステムを構築した。それら道路と橋の改修と新築。
B 学校:老朽化した校舎を改装/新築。コンピューターを各位教室に。「21世紀の経済を担う生徒は21世紀の学校が必要」
C ブロードバンド:情報ハイウェイのリニューアル。ブロードバンドの普及度でアメリカは15位という。そうだったのですか。『わたしが大統領であるうちに全児童がネットにアクセスできるようにする……こうしてアメリカの競争力を強化する』
D 電子医療:各医療機関をネットで接続、医療システムを近代化。最新の医療技術を適用し、医療ミスを防ぎ経費削減をもたらす。

●公共投資と景気の因果関係を疑う
ざっとこういう施策をレトリック上手に話す。しかしどれをとっても一部の先端で既に存在し、それは特にアメリカが抜きん出ている。IT産業、ノーベル賞学者が多数いる名門大学、有名大学病院や遠隔TV手術、オバマの娘が通学する私立校、などなど。これらを公共投資で全米に広げようたって言うは易し、器ができても中味が伴わない叶わないユメだ。上記5本の柱とは別に減税が95%の労働者に及ぶ措置も約束している。いまわたしは本気でアメリカを心配している。

公共投資で潤うのは受注する一部企業だけで、国家経済に直接、数量的に直接プラスになった例があっただろうか。近年、景気浮揚策で景気がよくなった例をしらない。景気が持ち直したのは産業再編と倒産の連鎖が一段落したあと、時代の流れ天の配剤である。(了)



Pnorama Box制作委員会

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