安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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(続)秋のクラコウ
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〈 2008年 11月 18日 火曜日 )


クラコウは大陸の中にあるが湿気が多い。滞在中は毎日曇り模様でしたが予報が外れて幸い雨は降らなかった。しかし朝ホテルから一歩出ると湿度のある風が日本の風の匂いのようで、ウンいいものです。写真がボヤけているのはそのせいです。

●ヴァーヴェル城
市壁に囲まれた旧クラコウは平地にあり、外敵を防ぐため頑丈で分厚く兵舎や武器の建物、物見の塔など19世紀には要塞都市の完成した姿を持っていた。旧市の南端はヴィストゥラ川に面して小高い丘になっている。このヴァーヴェルWawelの丘にポーランドの誇り、即ち他民族の支配下ではなかった中世のお城がある。写真左の左側が中世に再建された大聖堂、旧市の聖マリア大聖堂のような絢爛さはないが、わが町ベルゲンの大聖堂とは比較にならない豪華さ。代々国王の戴冠式が行われた。右は内庭から見た王宮の一角。内部はテーマ別にいくつかの部に分けそれぞれ拝観料を払う。案内嬢のことば:Visiting Krakow and not seeing Wawel is like playing tennis without a ball. ン、この句は応用が利きます。京都と御所とか東京と靖□とか……

左・ヴァーヴェルの城壁から川を見下ろすところにドラゴンの像。間歇的に口から火を噴く仕掛けになっている。修学旅行か遠足の子供たちがドラゴンの前で記念撮影。写真では手前の石灰岩の崖にドラゴンのホラ穴があり、羊を食っては若い娘をたぶらかしていた悪い怪物、その名をヴァーヴェルという。で、この怪物を退治したのがクラクKrak という若者で。クラコウの町の起源という伝説。ゲルマンの民話ジークフリードやシグムントとドラゴンのお話の1バージョンでしょうか。クラクのストーリーでは、ドラゴンの好物ヒツジのお腹に硫黄をいれて、洞穴のまえ置いた。喜んでこのヒツジを食べたドラゴンはお腹が焼けるように熱い。そこで水をがぶ飲みしたところ、硫黄と水が反応して爆発、悪いドラゴンは死にました。
右・左も右も教会です。クラコウには120の教会があるといいますから教会が隣に並ぶ光景があっても不思議はない。左は聖ペテロとパウロ教会。一夕クラコウ室内オーケストラのコンサートがあり、ヴィヴァルディの四季から「春」やモーツアルト、バッハ、モリコーネのポピュラーな曲を演奏。弦楽器5人と、曲によって全然聞こえないチェンバロが加わるだけの小編成。50分で終了。で、アンコールなし。照明がスっと消えておしまい。なにもかもケチってますな。

●ユダヤ地区『カジミエルツ』
クラコウから近いアウシュヴィッツに観光バスが出ているが、わたしは行く気がない。見るのがこわいのだ。TVもリアルに怖いものは絶対見ない。写真は見ても平気、小説は読んでも映画になると見ない。そういう小心者ですからアウシュヴィッツには行かないけれど家内が興味のあるユダヤ地区を案内板に記された「遺産の道」に沿って歩きました。この地区カジミエルツはスピードベルグの映画『シンドラーのリスト』の舞台、ロケ地でも有名です。

左・ダビデの星が見える建物は煤けて残るハイ・シナゴーグ。
右・オールド・シナゴーグ。キリスト教会やイスラムのモスクには尖塔があり仏教寺には九輪の塔や鐘楼があるので遠くから目印になる。ユダヤ教には神殿と呼ばれるタイプもあるが、概してユダヤの会堂であるシナゴーグには尖塔がなく寺院らしい決まった建築様式がないようだ。内部は博物館になっていてスクロール(聖書巻物)や移動組み立て式の聖書朗読壇などが展示されていた。
現在使用されている別のシナゴーグの内部を拝観したが、金色の壁装飾が一面に施されているものの質素です。真ん中に聖書を朗読する囲い壇がありベンチが並んでいるだけ、モスクのようにガランドウであるところは祭壇やパイプオルガンがあるカトリック教会の華飾と趣が違う。

左・オールド・シナゴーグの前、幅広い通りにあるルービンスタイン・レストラン。化粧品のヘレナ・ルービンスタインの実家。産まれたのは隣の赤い家だそうです。
右・旧墓地。収容所で生き残った者が死者を弔い墓に石を積むひとつ積んでは……。シンドラーのリストにも出てきた風習。

左・広大な新墓地の壁は壊れた墓石の破片が使われていた。
右・枯れ葉が何年も積もり下から草が伸び放題。墓守さんたちが数人棲んでいるような家や作業家屋もあるが旧墓地よりも荒れている。墓地にに入るとき、ユダヤの丸い小さな帽子「キッパー」を墓守さんが渡してくれた。死者に対する敬意である。ゆっくりと一時間近く墓石を見て歩く。名前と年代、どこで生まれどこで亡くなったか、家族構成や職業が銘記されていたりする。医師が多い。ユダヤ人の歴史が感じられる場所である。

●ダヴィンチ、クラナッハなど

さて今回4泊したグランド・ホテルはクラコウ心臓部のマーケトから1ブロックにあって、個人旅行に選んだことのない五つ星でした。ポーランドは物価が安いので五つ星といっても高くないのです。このホテルは19世紀、ツアトリスキー皇太子(Prince Wlandslaw Czatoryski)の宮殿だったとかで天井が6メートルはあろうか、廊下のステンドグラス、オール大理石の階段、レストランの3階吹き抜けステンドグラスの天井は10メートル以上もある。プリンスの家系が持っていた美術品を集めたコレクションがナショナル・ミュージアムの一部として旧市中に展示(The Princes Cattoryski Museum)されている。
上・ダヴィンチの『アーミン(白貂)を抱く女性』がある。小品だが一室に恭しく展示されていました。すごい、必見の名画です。Visiting Krakow and not seeing Leonardo da Vinci is like playing tennis without a ball. ですぞ!レンブラントの特別室もある。見ていくうちに農民がたくさん集まっているアッ、ブリューゲル、黒地に浮かぶ裸婦はルーカス・クラナッハ……腹部にナイフが触れて鮮血が一筋『ルクレチオの自殺』ですが画集では見たことのないバージョンだ。思わぬ発見があります。(了)



Pnorama Box制作委員会

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