安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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アイスランドの憂い
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〈 2008年 11月 3日 月曜日 )


●海外移住の願望
アイスランドに未来はない、希望が持てないと海外移住を望むアイスランド人が45%、地方の若年層に限れば60%以上が海外脱出を考えているという世論調査が出た。アイスランドはEU加盟国ではないが、ノルウェーとともにEEA(欧州経済領域)および人的自由移動を可能にするシェンゲン協定に加入しているので、EU圏に職を得て移住することはそれほど難しくない。

しかし借金を踏み倒して海外逃亡を願望する人はかなりいるんじゃないか。故国を捨てて集団移住する事態をイメージするととんでもないが、異常に高い願望率である。アフリカ、中東におけるアメリカへの移住願望なみである。

●IMFの厳しい融資条件
さて、先に合意したIMFの20億ドル融資が11月5日から実施されることに決まった。それにともない先日(28日)、アイスランドが金利を6p引き上げ18%にすると衝撃の発表があり、これがIMF融資の条件だったと説明された。後知恵ですが、ゲール・ホルデ首相が「この合意はアイスランドの再起に役立つ」と安堵の表情に厳しさが消えなかったのは、あの場では言えない金利の猛烈な引き上げが条件にあったからにほかならない。なにしろ危機対策に3.5%引き下げたばかりですから。

インフレが進んでいること、為替市場での暴落したアイスランド通貨の下支えに不可欠という理由だが、そんなものですかね。以前フィリピンで海外投資が一斉に逃げ出しペソ暴落がおこったときにもIMFが金利引き上げを条件に融資したためフィリピンは辛酸をなめる状況に至った。アイスランド中銀はおそらく数ヶ月で14%から徐々に下げるとおもわれる。

●恒例になった土曜日の反政府デモ
最近のアイスランド動勢を整理しておこう。土曜日に行われてきたレイキャヴィックでの反政府デモはしだいに大きくなり先週3度目の土曜日デモは静かな国民には珍しく、ホルデ首相の首つり人形を掲げるほどになりました。ホルデ首相はアイスランドの金融危機の責任はアメリカにあるとして辞任する意向はない。しかし世論では前首相で現中央銀行総裁のダーヴィド・オッドソンDavid Oddssonとホルデ首相がアイスランドの金融規模(GDPの9倍)を急激に膨らませたと非難されている。

ブラウン英首相がテロ国家呼ばわりにして英国内のアイスランド資産を凍結したのは、6ヶ月前にアイスランドに警告(海外債務はGDPの3倍)したのを無視した懲罰だった。この懲罰は効き目があり、ふらつくアイスランドの足をすくった。(不良債券がGDPの85%)

●遅れがちな北欧協力支援
支援はIMFのほか、隣国のよしみでフェロー諸島(デンマーク領)がいくらか申出た。北欧4カ国は支援額で一致せずまだ合意できていない。アイスランドと政治的、経済的に最も深い関係にあるノルウェーは独自でも支援するつもり。元宗主国のデンマークも拠出する。北海とバレンツ海に睨みをきかせていたケフラヴィクの基地から米軍が2年前に撤退した後、ノルウェーのF15戦闘機が定期的にこの基地に停留し、軍隊をもたないアイスランドの安全保障を担う取り決めになっている。そういった関係から見捨てるわけにはいかない。

EU加盟を考え始めたアイスランド
この危機でアイスランド国民の大半がEUに加盟してユーロ通貨に加わりたいと心変わりした。魚資源を犠牲にしてもよいとおもうまでに追いつめられたといえよう。そうなるとノルウェーだけがEUから取り残される事態は心許ない。北海漁業資源の分配にEUの力が俄然つよくなるのもこわい。はやく支援金をだしたいのはやまやまだが、ノルウェー経済も石油価格の低下と石油資金の運用でいずれも同じ評価損をかかえて左うちわとはいかない。自国の銀行救済プランがいろいろ物議をかもしている最中でもある。

●ロシアと再交渉
ホルデ首相はロシアからの支援交渉を再開した。交渉はロシアにアイスランド経済水域での漁獲クオータ見返りとして賦与する件である。北欧4カ国に早急な支援を促すジェスチャーか本気なのか定かではないが、アイスランドはあと20〜30億ドルの資金が必要。お金を運んでくる猫は赤でも青でも黄色でもみなよい猫、という論法。

アイスランド観光がいま人気です。夏は爆発的に増えますね。翻って円高の日本へ行きたい観光客は少ない。減らないアイデアはないものか。(了)



Pnorama Box制作委員会

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