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ロシアの罠に気づいたアイスランド
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〈 2008年 10月 25日 土曜日 )
●IMF、アイスランドに融資
アイスランド国家破綻の危機について、これで3度目ゆえ、危機に至った原因。経緯は省きます。IMFから融資を受ける交渉が先週からレイキャヴィックで行われていた。24日、ゲイル・ホルデ Geir Haarde首相が受け入れを発表。一昨日F.タイムズが「合意は近い」といちはやく報道した融資は10億ドルだったが、別枠で諸外国が融資する総額がおもわしくないためか、倍増された。 IMFの救済案『アイスランド経済安定化融資計画』要旨: ▼今後2年間で計20億ドルの融資 ▼そのうち8億3000万ドルを直ちに融資 ▼2015年をメドに返済する。▼IMF理事会の正式決定を要する。(早急に承認される予定) ●北欧勢と日本の支援 このIMFによる支援パッケージには北欧5カ国(アイスランド、デンマーク,ノルウェー、スェーデン、フィンランド)と日本が加わって立案された。ノルウェーは財務省のチームをレイキャヴィッックに派遣していました。毎年持ち回りで行われる北欧サミットという親睦会みたいなものがあり、来週ヘルシンキで開催されます。今回は親睦会以上にアイスランドに幾ら出すか決めなければならない。IMFからは40億ドルくらい要請されている。それぞれ自国の銀行救済に公的資金を注入しているのでアイスランドに気前をよくするわけにもいかず、日本の支援が期待されている。 ●円借りに泣く市民 近頃レイキャヴィックの様子はというと、失業、給料遅配で暗いものの政府の預金全額保障措置でやや落ち着いた。外貨建てで借金して家や車を買った月々の返済に、人々は出費を切り詰めもくもくと働いている。レストランやバーで夜通しにぎわった繁華街は閑古鳥が鳴いてますな。とにかくアイスランド通貨が暴落しているので外貨建て借金が倍になった。どこの外貨かというと利子がとびきり安い日本円です。しかも円高ときた。泣きっ面にハチである。アイスランドに限らず、円で調達している外国の自治体や政府官庁が結構あるのですね。 アイスランドが抱える海外債務はGNPの3倍、救済には150億ドルが必要といわれている。IMFの20億ドルと北欧各国と日本で30億ドルくらいがプラスになれば、締めて50億ドル(5000億円)。忍耐強く日本人より働きバチのアイスランド人の国は再起できるだろう。 ●通じなかったロシアの戦略的思考 さて、プーチンが二つ返事でOKした支援に要求した条件がキツかった。アイスランド経済の土台であり国の原資である魚資源を担保に貸し付けるという。これですべておじゃん。 代わってIMFが名乗り出た背景は、アイスランドをロシアの北大西洋戦略に取り込む目論みが見えたこと。当地の新聞報道によると、プラウダ紙が論説で「アイスランドは北大西洋の真ん中に位置する戦略上の要である。ロシアのよきパートナーとなるだろう。かの地には2年前米軍が去った軍事基地があり、我が国のB爆撃機がたやすく接収できる。ここからなら途中で給油することなく容易にアメリカへ飛んでいける。」というような、ストラテジーの見地からアイスランド支援を見ている論説が出た。プーチンが無条件でお金を貸すはずないわな。 ●正しい位置に帰ったアイスランド NATOは受け入れられない。アメリカは許さない。また米空軍が軍備を持たないアイスランドから撤退したあと、アイスランドの安全保障に責任を担ったノルウェーが慌てた。それでアイスランドはIMFの支援が受けられるようになった。IMFが西側に融資するのは1976年、イギリスの銀行界破綻に救済資金を融資して以来という。(了)
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