安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ザルダリが大統領に?
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〈 2008年 8月 25日 月曜日 )


●ムシャラフはどこへも行かない
国民に不人気なことは最近はじまったのではなく、9.11でアメリカと対テロ協力のパートナーになって以来のこと。中東イスラムの人々は9.11のニュースに歓喜した。パキスタン国民も歓喜した。そんな国で対テロ親米を見せると人気が出るわけない。国力がないため、ムバラクやサウジ国王のようになまぬるい対応ができなかった。それにしてはよく米の要求をサボりながら支援を引っ張りだしたものだ。

いまタダの人になったムシャラフは陸軍基地のなかの家で安全に生活している。ムシャラフは民間で働いたことがなく軍でキャリアを積み、同僚部下の人気はすこぶるよい。現在のパキスタン軍司令であるキアニ将軍はムシャラフが制服を脱いだときに任命した後任である。御大の退任後はなにがあっても面倒見ますという将軍たちにかこまれてとりあえず小休止というところか。

ザルダリの人民党とシャリフのムスリム連盟は、ムシャラフという共通の敵を追い出すことで一致、この一点でともかく与党連合を保ってきた。だが敵がいなくなれば仲間割れするのが世の習いである。二人が「内は喧嘩」している間は、ムシャラフは安全だ。仮に訴追されるとしても内紛与党はそこまで手が回りませんから。チョウドリ最高裁判事長の復職を迫るシャリフと、復職すればザルダリの恩赦取り消しをやりかねないチョウドリ判事のカムバックを恐怖するザルダリがウンと云わない。云えませんな。

●ネポチズムを変則悪用するザルダリ
大統領選任の期限は9月6日、もうすぐというのに候補がいない。ドロドロした最前線の政治家が十徳な人物の出現を塞いでしまったため、第一党のザルダリが大統領に立候補したではないか。どうやら数を合わせると当選する見込みになった。妻である故メナヒム・ブットとは殆ど別居生活していた寡夫が政治遺産を継ぐようになると誰が予想しただろう。M・ブットの後継者は外国育ちの息子ビルワリ、19歳、学業がおわるまで後見人としてザルダリが党首を代行する体制だった。でも息子はパキスタンに帰っているぞ。何もいえないだけだ。

ブット一族にかぎらず、パキスタン政治はネポチズムが蔓延している。ネポチズムを排したクリーンなリーダーは誰あろう、ムシャラフなのです。辞任演説の最後で『常によき相談相手で支えてくれた母、妻と子供たちに感謝する』と殊勝でした。そりゃお母さんも妻子もいるでしょうがへえー、聞いたことがない。息子が何をしているのかNETで探してもわからず、孫が4人いるそうだ。

シャリフもM・ブットも在任中から不正蓄財のウワサがあり、ザルダリは妻の名を騙って不正ビジネスから殺人関与の疑惑まである。ケムリのないところにウワサはたたないとわたしはおもっている。ザルダリは悪知恵がよく回る。ネポチズムを変則的に応用して全権力を掌握する日が近い。攻勢に転じたタリバンに対策はあるのか。

因に、大統領選出には上下両院の国会議員と4つの地方議会議員の投票で過半数に達すればよい。シャリフ派は対抗候補をだせず、ムシャラフが強大にした大統領権限を前のタラニ大統領のときのような象徴的地位に置き換えるようにすることと、投票日を最低一ヶ月延期するよう求めている。しかし、ふたつのマイナー与党はザルダリ候補を推す意向である。(了)



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