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ムシャラフ閣下へ
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〈 2008年 8月 19日 火曜日 )
●ムシャラフ鎮魂
「わたしは今日大統領を辞任する」。国営TVでムシャラフが辞任の演説をしたのはちょうど弾劾草案が完成してから1時間後のことである。他に選択肢はなかったといえ賢明な決断をよろこぶ。そしてムシャラフを傑出した政治家と考えているわたしは今宵、神妙な心持ちなのです。 ムシャラフは独裁的ではああったが、言論の自由、報道の自由を守った。また反政府活動家を迫害、収容所送りにすることはなかった。ブットやシャリフが帰国して反ムシャラフ政治活動を止めなかった。チョウドリ最高裁判事長をはじめ法曹界とは軋轢があり判事たちを総入れ替えしたが、抹殺したわけではない。まだチョウドリが復職できないのは、ムシャラフでなくスネに傷持つ(汚職疑惑)ザルダリが反対しているため。おなじ独裁でもロシアやCIS諸国の権力者のそれとは比較にならないほど「自由」であり、人命を尊重した。 ●人品卑しい与党党首たち テロとの戦いで米の相棒として喧伝されるが、それは誤解だ。ムシャラフは防御が専門で、軍に命じて攻撃したのは神学校に閉じこもった過激武装学生を一週間待って、やむにやむなく爆撃したあのとき一回きりである。米から莫大な軍事支援を受けていながら国内には米軍基地を置かせなかった。なかなかできることではない。カルザイのように米兵のボディーガードをつけ、各国の軍隊に助けられながらムシャラフ批判を繰り返す首長ではない。あれは中国や韓国の反日と一緒で汚い手だ。 ザルダリ-PPPとシャリフ-PLM-Nの与党連合は政府発足以来この半年にムシャラフをどうするかでもめ続け、物価上昇、水不足、食料不足に有効な対策がとれず不穏な状態が再燃したカシミール、アフガニスタン国境地帯の武装集団など政治の空白をもたらした。なんとかパキスタンの政府機関が稼働したのはギラニ首相と人品卑しからぬムシャラフの働きによる。 ●支持者の忠誠を試さず 辞任前日の日曜日に伝えられた情報では、側近やアドバイザーたちが弾劾の法的根拠はうすく法廷で無罪を勝ち得ると結論、辞任せず執拗にファイトを促しているということだった。1時間を超える演説の中で法廷闘争を避ける理由を、弾劾に正面から立ち向かう準備はできているが、「国家機関のあいだで互いに争えば、軍の介入を呼ぶ事態がおこるだろう」、「議会のかけひきや支持者の忠義をためすようなことはしたくない」。あくまでスムースな政治継続のためである。 さて、国会議長が暫定大統領に就任するが、誰が選ばれるのか全く白紙である。一般市民の生活はどんどん悪くなり、そうなるとますます反米、ムスリム回帰がおこるだろう。あの国はまだなだデモクラシーで食っていける国ではない。(了)
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