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NATOとEU加盟が遠のいたグルジア
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〈 2008年 8月 12日 火曜日 )
●オセチア・ロシア人の起源
南オセチアの来し方行く末について、大雑把に強引に整理してみます。本来は平地に住むロシア人がコーカサス山脈の中にどうしてロシア人がいるか、その昔、蒙古の世界制覇に押されてヴォルガ川を超えてコーカサスの高い山に逃げ込み、下界と隔離した自立の民を祖先にもつ。で、ヴォルガの北から東へカザクスタンには征服した蒙古の末裔たちがいる。顔つきが日本人に見えるナザルバエフ大統領は家系をたどればジンギスカンの騎兵か馬周り役ですかな。ウチの親父は戦時中満州にいましたが、馬の世話役で鉄砲もって突撃しなくてもよかったそうです。戦地でのんきに油絵を描くなどして無事かえってきました。いきなり横道にそれて失礼。 いいたいことは、コーカサスのロシア人は独立気性が根付いているので、グルジアに統治されることをよしとしない。ソヴィエト崩壊に伴い、コーカサスの最高峰を境に北オセチアはロシア連邦の一共和国として、南オセチアは独立を宣言したが、いかんせんどこからも承認されず、国際的にはグルジアの自治州である。北オセチアは学校人質占拠で知れ渡ったように、ロシア連邦から分離独立を目指す地下組織がある。 ●危機を招いたNATO加盟推進 グリジアはサアカシビリが大統領に選出(2004年)されてからからおかしくなってきた。石頭のオセチア自治政府にグルジア憲法を適用するようせまりNATO加盟を推進し、これにブッシュが好意的に答えたときからますますおかしくなった。 昨年、いや今年のはじめだったかな、ブーイングで迎えられたブッシュ欧州歴訪で大歓呼を受けたのがトビリシでした。それまではグルジア国内でも反政府運動がひろがり大きなデモがありましたがサーカシビリは反政府指導者を根こそぎ逮捕して鎮圧した。そういえばスターリンはグルジア出身でしたな。 そのほか義務教育からロシア語を廃止したり、プーチンを刺激することばかりやっては過様々な形で小競り合いをくりかえしてきた。特に今年中にメドがつきそうだというEUとNATO加盟推進がプーチンを激怒させた。プーチンが南オセチアの分離独立派にテコいれと2000人のロシア兵を『平和維持部隊』という名目で州都に配備した原因である。 ●プーチンの罠か? 今回、グルジア軍が南オセチアに先制攻撃をかけたのはこの『ロシア平和維持部隊』を追い出すつもりでオリンピックに出かけたプーチンの留守中、鬼のいぬ間の早業のハズでした。が、プーチンの罠にはまったという見方がある。あのロシア戦車の隊列が一日で州都に入り反撃した速攻、グルジア内各地にある軍事関連施設を確実に爆撃し、南オセチアのすぐ外側にあるゴリを制圧してサット撤退。アブカシア自治州も制圧した上、近いグルジアの町セナキに侵攻してサっと撤退。グルジアの交通要所−幹線ジャンクションや橋を占拠して首都トビシリを隔離する作戦をほぼ終えた。 西側がやっと調停に乗り出すまでのあいだにミッション完遂である。罠かどうかはともかく、グルジア攻撃の軍事シナリオは周到に計画されていたことに間違いない。 ロシアのグルジア攻撃は一応完了したとみていいだろう。もしグルジアが戦闘を再開すれば倍に報復されるだけである。停戦交渉については現在EU議長国であるフランスがまとめた停戦案をNATO、OSCE、G7、米をはじめ西側が一致して推すことになった。サルコジの出番、だいじょうぶかな。 ●グルジアが失ったもの ロシアは停戦条件を一段あげて、グルジア軍の攻撃停止からグルジア全軍の武装解除を要求してきた。そんな戦勝国が敗戦国に課す旧時代の戦後政策を今世紀に持ち出されてもね。グルジアの今後は暗い。NATOおよびEU加盟は棚上げ、サアカシビリは任期まで留まれてもレイムダック。自治州へのグルジア影響力はゼロに低下する。(了)
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