安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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タリバンの夏
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〈 2008年 7月 18日 金曜日 )


●タリバン夏の蜂起
アフガニスタンの夏はタリバン蜂起のシーズンです。今年の夏は特に攻勢をかけてきた。去る日曜日、タリバンの急襲に不意をつかれ、米兵9人が死亡した事件がありました。米軍の情報力が不足、逆にタリバンへは同盟軍と政府軍の動きがつつ抜けになっている。この事件の概要は、南東部のパキスタン国境に近いワタナ村の近くに米軍と政府軍が前線駐屯地(outpost)を建設するため、場所選びをしていたところへ200人のタリバン兵が襲撃してきたのである。

●この7月は2001年以来最悪
5月以来、アフガニスタンでの米兵犠牲者はイラクを上回っており、7月半ばですでに21人の米兵が死亡した。イラクでは6人ですから、アフガにスタンでのエスカレートぶりがいかに激しいか。2001年タリバン敗走以来最悪の7月となりました。ロシアの論評は「軍事力で絶対にタイバンには勝てない」で終始一貫している。当時のロシア退役司令官がなぜ勝てないかを力説しているのをTVで見て、ハハハ、ロシアが勝てなかったハズだと納得した。ま、あのときは米がタリバンを支援してロシアを追い出したわけで、現在のタリバンにはロシア製、中国製の携帯武器が出回っているが中露政府が関わっているのではない。今日のタリバンは政権を掌握していた宗教指導者オマルのようなトップからピラミッド型の組織ではない。また一般市民が米兵を嫌っていても、ロシア兵を憎悪していたほどではない。

●ブッシユに方向転換を迫るアフガン情勢
だが、米軍やNATO、ISAF(International SecurityAssistance Force, 国際治安支援隊)がこのままズルズルしていてははロシア撤退の轍を踏むことになりかねない。ということでNATO はパキスタンに越境攻撃に踏み切り、米はアフガン派兵増強をひねくり出すのに知恵を絞っている。それがブッシュのイラク派遣兵の撤退開始→アフガンへの移転配置、イランと対話を準備→イランに米の事務所設置、という方向転換に向かわせた。このブッシュのオバマ寄り政策については改め書くつもりです。

米軍が戦闘ヘリやドローン(無人偵察爆撃機)でパキスタン側に逃げ込んだタリバンやその拠点を攻撃することはしばしば、そしてまたしばしば目標を誤って民間犠牲者が出た。たいてい前もってパキスタン側と事前承諾、政府軍と合同で対応しても不幸な結果が出る。それですむ問題ではないけれど……

●NATO、パキスタンへ越境攻撃
ISAFのパクチア州基地にパキスタン側、北ワジリスタンからロケット砲撃があり、ISAFがロケット砲で応戦するとともに武装派の発射地点・カラット(mound)にヘリで越境攻撃をおこなった。この越境攻撃も現地のパキスタン治安軍と合意の上であったが、土地の部族たちが騒ぎ出し、武器を持って国境に集結したという。NATOは地上軍を越境させるつもりは毛頭ないが、タリバンの温床であるこの辺境部族社会を誰かが変革しなければタリバンは永遠である。

誰ができるか? ザルダリ実権党首やギラニ首相ができるか?パキスタン軍を辺境に展開し、しらみつぶしにタリバンとそのシンパを取り締まるこできるとすれば、それはムシャラフとキアニ総大将の子弟コンビしかないだろう。さて、ムシャラフは復権するか、というよりなぜまだ辞任もせず裁判にかけられずにいるのか……この辺りも書いてみたい。

●日々好日の毎日、肉体労働に励んでおります。手が節くれ立ち,指の柔軟体操に痛みを我慢して♪ムスンでヒライて手を打って結んでノ♪とやっとります。(了)



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