安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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パリサミットで開いた徒花
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〈 2008年 7月 14日 月曜日 )


●パリ-サミットのニクい議長サルコジ
土日の二日間、パリで開かれたEU+地中海沿岸国サミットの評判がすこぶる良い。フランスメディアはパリ・サミット議長サルコジの成果に大喜び。コメンフランスが政治的にこれほど国の誇りを取り戻したことは、かのフランスの栄光を具現したド・ゴール以来なかったのでは……。EU持ち回り議長就任を機に見込みのない地中海連合構想を薄めてサミットの形に焼き直した。サミットだけなら連合規約を討議する事も、決議声明もない。首脳間で瓢箪からコマが出ること大有りなのです。場をとりもったニコラ・サルコジはニクい役者である。そのニクラシさと成果を拾ってみよう:

●異文化のごった煮
パリのガラスドーム、グラン・パレに集まった首脳はEU27カ国と北アフリカ、バルカン、アラブ、イスラエルといった地中海を取り巻く異文化の諸国、グリ−ンランドからヨルダンの砂漠まで、人口7億5600万人を擁する43カ国のトップたちだ。壮観の一語に尽きる。とはいえ米中露抜けたサミットでは限界がある。ASEANのほうが世界的には重要だろう。地中海サミットではもっぱら中東紛争の和解に重点をおき、温暖化を討議しても石油資源や宗教問題にタッチしない。ウマミを掠めとって臭いモノには蓋をするニクイ手法である。

●サルコジの利便外交
不参加はリビアのカダフィ一人だけ。サルコジの地中海連合を新植民地主義と切って捨てるカダフィは甘い誘いを植民根性と一喝した。でも、カダフィが出ないので安心して来れるアラブの国には好都合でした。参加に乗り気でなかったエジプトのムバラクには地中海サミットの共同議長になっていただき2年に一度開催する事でサミットに引き出した。また外交上マズイ国同士が多いので、全員の記念写真は撮らないことで妥協。

●ブッシュ米離れを誘う地中海構想
国際会議にお呼びでなかったシリアのアサドが当然喜んで参加、トルコのエルドガンが仲介してアサドとオルメトが近く会談するやもというコマが出た。シリアはイスラエルの建国そのものを認めず外交関係をもたないまま公的には戦争状態にある。ヒズボラ、パレスチナを支援するシリアを国際社会から締め出しているブッシュにすれば顔にドロを塗られたことになりますわな。米の支援あればこそ存続できる大恩をオルメトはブッシュを踏んづけたことになりますわな。ニュースが大きくなって慌てたアサドはイスラエルと直接話し合いをするのはブッシュが任期を終わってからだと、イヤガラセしました。

上記のシリア=イスラエル会談は先のはなしだが、シリアとレバノンが互いに大使館を設置することに同意した。2005年のハリリ暗殺以来、険悪な両国だが、そろそろ公式パイプが欲しいところだ。シリアに異存はない。米に遠慮していたレバノンがサルコジの仲介に飛び乗ったわけで、ここでもアメリカ離れがはじまった。

●オルメトの最後ッ屁
しゃくに障った一番がサルコジを挟んでオルメトとアッバスが喜び合う映像だ。はー、ライスとブッシュに譲るべき図ではないのか。オルメトが『障害、難題、不一致は多々あるが、和平合意にきょうほど近づいたことはなかった』とアピールした。"There would be obstacles, problems, disagreements but we have never been as close to the possibility of coming to an agreement as we are today". オルメトは多額の収賄容疑で足下に火がついている苦境にあってこのサミットを幸いにアッバスを騙って保身の点稼ぎである。あがいてもいムダ、オルメトがこの夏のあいだに辞任に追い込まれるのは確実です。サルコジの華々しく見える成果とやらは実らぬ徒花(あだばな)である。(了)



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