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石油増産への近道はイラク
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〈 2008年 6月 25日 水曜日 )
前回の続き:
●待たれるイラク石油基本法の成立 この欧米4社とイラク政府の石油技術サービス契約は米が2003年にイラク侵攻を始めてから最初の契約である。もちろん原油の販売に関してはイラク国営石油が欧米数社に原油の入札販売を行ってきたが、メジャーと生産に関してなんらかの契約を結ぶのは初めてである。技術支援によって現在生産している五つの主要油田から効率的に増産する。技術導入に依り、来年には日量60万バレル増産し現在の250万バレから310万バレルに増やす。6項目の契約書面は発表されていないAPによると、支援契約企業に技術料として上限5億ドルを支払うそうです。 ●独自路線のクルド 資源開発の契約と言えば、鉱区入札が普通である。しかしイラクはクルド、スンニ、シーアのあいだで石油をどう配分するか、石油基本法が合意されていない。イラク石油法案は新政府が05年に草案をつくったものの、クルドは自治州内の闊達な油田を中央政府が干渉する権限はないと対抗し、市場にあわせた独自の石油ビジネスを推し進めている。すでに海外20社ぐらい、中小のサービス各社がクルド地方政府と契約を結んで試掘中、あるいはオーストラリアのOMVなどは既に吸い上げている。対して、連邦政府はクルド自治州との契約を無効と断定し、国の石油法案が成立すれば没収されますよと忠告しているのですが。 ●油田権利を放さないスンニ スンニはというと、武装組織が米軍と協力するようになってから米兵の死亡者が激減した。(ただしシーア武装派による市民テロはあいかわらず。)いまではスンニ派議員たちがシーア・マジョリティーのマリキ政府に協力し、部族間の武力衝突は見られなくなったが、石油の分配に関してはいがみ合ったままだ。油田地帯を有するスンニと、石油の分け前をよこせという持たざるシーアがうまくいくか、それともイラク石油法が新たな部族抗争を引き起こし市民戦争の泥沼にはまるか、危険をはらむ法案だけにシーア過半数の政府は治安回復まで成立を急がなかった。それは正しかった。 ●公平分配を示す憲法 そういうわけでイラク側は総括的な鉱区のライセンス入札をおこなえる状況になく、技術支援のワク内での契約を余儀なくされた。イラクの石油法はについては、概要が憲法に記されている。その憲法草案は2005年に議会が採決ナシで強行可決、その後国民投票でスンニ地域で否決されたが賛成多数で承認された。石油法の基本概念はチットモ悪くない。詳しくは草案ができたときのコラム、2005年8月29日『イラク憲法のゆくへ(2)』参照ください。 一部引用: >連邦制について、スンニが反対しているのは石油がクルドと、南部の油田地帯をもつシーアに持って行かれるからという意見がある。また石油のない中部のシーア-サドル支持者が持てる南部シーアと政府に攻撃した。どうも解せない。クルドの場合はサッダム時代から事実上自治区であったが、石油資源の利益はサッダムの独裁政権が管轄した。 今度はそれがイラク連邦政府にわたる。油田地帯の地方政府が自由にできるわけではない。念のため憲法草案にザっと目を通すと、連邦政府は石油/ガスを算出する地方政府とすり合わせて利益を各地方、各州に公平に分配するとある。資源開発/生産行政についても連邦政府と地方政府が協力して…となっている。< ●安上がりに増産できるイラクの原油 連邦政府の力が増し、独立国家の形態が整えば石油法を実施する環境が整う。増産への近道、石油高騰をストップする即効薬はイラクにある。中東石油生産国は口を揃えて供給は充分、石油高騰の原因は投機とドル安にあるという。その通りには違いないが、インドや中国の需要を今後とも満たせるか、先を読んで投資するのが経済活動ですから供給が先細り、需給が増える化石燃料が投機の対象になることは避けられない。イラクの油田開発は海底油田の新開発よりもはるかに安直だ。石油価格安定に最も早く持続させる確実な道である。先回、埋蔵評価量1150億バレルと書きましたが、これは調査証明済みの算出であり、2000億バレルあるとスペキュレーションする元気な地質やさんもいる。(了)
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