安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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サルコジ、NATO復帰とEU防衛軍構想
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〈 2008年 6月 18日 水曜日 )


● EU議長国就任をまえに張り切るサルコジ
フランスがEU議長国(六ヶ月持ち回り)になる7月をひかえたサルコジ大統領が17日、NATOへの完全復帰を目指すと発表。同時にEU防衛軍の具体的構想やフランス軍のリストラ新防衛政策を打ち出した。

ド・ゴール大統領がNATO を主導するアメリカにあいそをつかして脱退したのが1966年、あの頃は米資本がフランス企業を買収したり米仏関係が好ましくなかった。その後もフランス大統領はポンポドー、ジスカール・デスタン、ミッテラン、シラクとみなさんフランスの栄光に熱心でアメリカに批判的だった。近代フランス史上外国系のサルコジ大統領夫妻がはじめて誕生したことは、米のオバマに魁けるできごとに思える。サルコジの政治スタイル、国際感覚はあのドゴールの対極にある。それが手放しで良い事だとは申しませんが、方向性はそれほど違わない。特に暴力デモの鎮圧ぶりに、わたしの記憶はドゴールが学生デモを蹴散らした映像にかさなります。

● EU軍とNATO 軍の両立へ
フランスは1995年から部分的にNATOに復帰し、軍事政策・戦略委員会に参加、コソボ多国籍軍のKFORやアフガニスタンのISAF国際支援部隊にNATO軍として派兵し、現在さまざまなNATOミッションに5000人派遣している。決して少なくはないが、フランス人司令官を推したり指導力を発揮したいならもうメンバーに復帰してもう一奮発いりますね。

このNATO復帰は、アメリカが疑心暗鬼するEU自前の防衛隊創設に理解を得るためでもある。当地に長く住んでおもうのですが、ノルウェーはEUに加盟していないため、NATO のメンバーでいることにそれほど違和感がなくてすむが、EU加盟国の住人たちには在欧米軍と一緒になった欧州各国軍という時代は終わったと感じているだろう。それよりも欧州合同軍と米軍の軍事協定が望ましい。

●両立からNATOの縮小へ
米がEUのポーランドとチェコにミサイル防衛システムを配備してプーチンを激怒させた。あれは当時最大の親米国だったポーランドとチェコだったから可能になったが、ドイツやイタリアに配備することは絶対にできない相談だ。米がNATOを梃に欧州の軍事政策に介入することは今後の大西洋関係を損なう。トレンドは米軍と欧州軍を分けた方が望ましい。サルコジの主旨はそこにあるとおもう。

また国内的には国際部隊に派遣しているフランス軍5万人を3万人に削減し、情報戦略を大統領官邸に一本化してサルコジに直属させ、軍事予算を削減、現行GDP比3.3%/の国防予算をゆくゆくは2%まで縮小する。時代に即して軍の組織を改革し軍事費を削減する……けっこうな方針ではありますが、言うは難し、行うはなお難しと申します、前途多難。

補注:欧州防衛軍-EU Defence Forcesは90年代はじめに構想されたが、米とEU外の欧州NNOTO加盟国の反対にあい、KFORの指揮権をEU軍として担ったり、アフリカへ派兵など行ってきたが、常設軍の設置は実現していない。サルコジの構想は緊急事態に機敏に対応するために主要6カ国(英仏独伊西波)がそれぞれ1万人を派遣、合同6万の精鋭部隊を常設するというもの。(了)



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