安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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アイルランド、EU首脳にハチの一刺
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〈 2008年 6月 14日 土曜日 )


● 『EU憲法修正条約』にNO
アイルランドは『EU憲法修正条約』を国民投票に委ねた。12日行われたが、出口調査で予測がつかず13日の全集計を待って出た結果、53.4%:46.6%で否決、反対派のクリアな勝利におわった。

世論調査では反対がやや優性とされていたので予想外ではないが、EUの横っ面を叩く侮辱が現実にったのですから、ブリュッセルのEU本部職員たちは足が震えたでしょうね。この条約は、ご承知のようにシラクさんが起草委員長になって作成したEU憲法がオランダで否決され、お膝元のフランスでも否決されてしまい、道半ばで破棄されたEU憲法を修正した第2案です。

修正された第2案は、反対のあった中央集権的でEU をメンバー国家の上に位置するかのようなEU大統領、EU外相、EU検察局 新設EU軍司令官などの権威的要素を薄めてAMMENDMENT(修正)して作り直した条約です。これがリスボンで行われたEU会議で承認された。

そういうわけで通称リスボン条約といわれたり、憲法の文字を使わず単にEU Treaty(欧州条約)記されますが、ここでは『EU憲法修正条約』と書きました。実際はEUの基本理念、組織と運営を規定している300ページに及ぶ修正憲法です。読むつもりで落としたダイジェスト番はどこどこをこうこう修正するという書き方でシロウト向きではないので読むのやめた。

●5年越し、もたつくEUの基本構想
憲法草案が上奏されたときは一応ダイジェスト版を読んでコラムに書きました。これ、03年7月21日のコラムですが読み直してみると感慨深い。ほかに日付け、05.05.29、05.05.31、05.06.02にもその後の否決動向を書いています。

さて、今回アイルランドの3与党が結束して国民投票に問うたにも拘らずNO と出た原因は、シン・フェン党のゲリー・アダムスが久しぶりに反骨ぶりを発揮して反対派を動員した威力が大きい。与党は無関心派をなんとか投票所にとがんばったが投票率は53%にとどまった。私感ですが、アイルランドはEUに加盟した当初、かなり資金援助を受け経済はよくなった。このことは当時ダブリンに一週間いて実感できた、実感できた。しかしながらEU27カ国約5億の 人口の1パーセントに満たない小国アイルランドの人々はEUの決定につめのアカほども参与できない哀しさがある。棄権が多くなった原因とおもう。

●サルコジ&メラケルの強気とブラウンの悲観
条約には加盟国全ての批准が必要と規定されている。一国でも否決すればオジャン、死に体になるはずですが、サルコジとメラケルは残りの国の批准に影響せず、全部おわるまで見届けよという。まったく事大主義のEU主導国らしく小国の決定をを無視する態度にでました。

現在まで18カ国が『EU憲法修正条約』に賛成、批准している。前回、国民投票で否決が続出して失敗したため、今回は国民投票を避け、国会決議によって批准する国が殆どである。しかしこのアイルランドのNO は今後の批准にくらい陰をおとす。チェコの大統領は批准の見込みがなくなったと言い、ブラウン英首相は批准するつもりだが、反対意見が多いと弱気になりました。

●オバマ旋風のアイルランド版
どうしてアイルランドは国民投票にしたか、超・重要法案は国民投票でという考えが浸透していることと、農業、ビジネス、労働組合の賛成があり、与党は自信をもっていたが、ゲリー・アダムス旋風が既定とおもわれたカウエン首相とアハーン司法省組に追いつき勝利した。ちょうどオバマ旋風が、ビルとヒラー組を破ったようなものか。実際,人口の多いダブリンで賛成派が勝ったものの地方は負け。ヒラリーとオバマの得票地域ににてますな。(了)



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