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北極、海底資源のたたかい(3)
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〈 2008年 6月 4日 水曜日 )
●センターライン原則で合意
前回のコラムははちょうどが始まったときでした。米はライス長官が中東訪問とかちあったため、代わりにネグロポンチ次官が出席、この人と出席したロシアのラヴロフ外相は衝突しない。すでにロシアはプーチンのブラフ(海嶺を大陸棚延長とする経済水域)を引っ込め、5月28日、会議後出された声明では、公式にこそまだ発表していないが北極点と各国海岸線を基準にセンターラインを原則とすることで同意できた。また後数年で通過可能となる北極航路を国際航路としてオープンすることにも基本的に合意した。 ●北極航路を国際航路とする 東シナ海で中国は依然として中間線境界を認めていないが、北極海資源の中間線原則同意によって「大陸棚のおわるところを海の境界」とする中国の主張は一段と弱くなる。日本には追い風となるが、しかしこれは同時に周辺5カ国以外は北極海底資源にタッチ出来ないことを意味する。そのために5カ国はこれまでのいがみ合いをお休みに、そくさくと合意声明を出したのである。シビライズされた話し合いで解決などと感心している場合じゃないのです。 ●係争中の問題は先延ばし ディテールを詰める作業についてはしかし永遠とおもえる紛争が各国間に存在する。ノルウェーとロシアでバレンツ海の境界線がが係争中。カナダが国旗をたてたハンス島はデンマークが領土権を主張。あと数年で開通する北極海航路は、ロシア沖を通る北東航路(シアトル〜ロッテルダム)の管理と通行料はロシアの権利となるが、米とカナダ沖を通る北西航路(横浜〜ロッテルダム)の管理と通行料はどうやって分割するか。そのまえにカナダとアラスカと米が争うブーフォート海の境界が先決だ。 ●米のご都合主義 特に米は200カイリ経済水域を制定した海の国際憲法と言われる国連海洋法条約(1982年)を批准していないが、氷が融けてアラスカ北方沖の漁業が可能になるとわかってから態度を変えた。近々批准するだろうといわれる。もう一つの理由は要するに南極条約のように北極条約をつくって聖域にしようという運動の芽を摘み取っておくためです。思い起こせば、この海洋法ができた82年に北極の氷が融けて海底ボーリングできるなど想定外だった。だから世界の殆どの国は批准しており、それが足かせとなって関係5カ国以外はみすみす手が出せない状況にある。 ●人類は極地を触るな。 デンマーク、ノルウェー、カナダ、米/アラスカ、ロシアの5カ国は、係争はあるもののグレーゾーンにしたままにしておいて資源開発を進めるほどにはシビライズされている。だからまた10年先が現実的でコワイのです。信念というほどでもないが「極地は人類がさわらないほうが地球が長持ちする」。かように思う。少なくとも極致観光は止めるべきです。 ノルウェー外相ヨナス・ストーレは北極海分割は国連の法律が既に決めたことであり、そのことを確認したにすぎない。政治的要望、つまり資源開発をするつもりはないという。そう言いながらバレンツ海ではガスを採っているし、国連に資源要求書/調査資料を2002年、一番先に提出したのはノルウェーとロシアです。デンマークとカナダは2014年が締め切り。 この国連審査でロシアは調査不足として却下されたことは前回触れた。余談ですが、この席にアドバイザーとして出席した地球物理のY.K先生(コラムに何度か登場)は、あとでロシア代表からデータを譲ってくれと付け回されたとこぼしていました。ただし現在のロシアは経済力にモノを言わせて研究分野も活気づいている。(了)
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