安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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北極、海底資源のたたかい(2)
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〈 2008年 5月 31日 土曜日 )


●臆面もないロシアの海嶺大陸棚説
ロシアは大陸棚で線引きしようという。北極の海底はロシア側の大陸棚からグリーンランドの大陸棚にかけてほぼ一直線に、極点の下を通る「ロモノソフ海嶺」が伸びていている。これをとっかかりにロシアは極点まで経済水域を主張するが、海嶺を大陸棚に含めるなんぞ科学を無視した言いがかりが通るとはロシアももちろん考えていない。狙いはこの海域では最も広い大陸棚を持つロシアが後の線引きを有利にしようという算段であり、おまけとして旗をたてるシンボル示威のエクスキューズに利用できた。

もしロシアの主張する大陸棚領海ドクトリンが少しでも考慮されるようなことがあれば、東シナ海日中の線引きで中国がセンターライン・ドクトリンを受容する扉は完全に閉ざされることになる。ロシアの北極資源政策は要注意である。プーチンがホドロコフスキーをシベリア送りにし、ガスプロムの会長に安全な部下メドヴェーデフを就け、これを後任大統領に置いてガスプロム社長には新しい部下を任命した。これはプーチンがロシアのエネルギー政策100年の計のひとつに北極海資源宝庫を確保するために配置した布陣であある。

しかし、プーチンの戦略とウラハラに北極海の地質調査は遅れており、2001年の国連が調停する海洋資源委員会でロシアが提出した大陸棚資源調査報告は内容不足で却下された。キチンと調査して出直して来いというわけだ。北極海に経済権利を持ち、未だ調査報告を国連日出していないい隣接国も2012年にほぼ出そろう予定。最も調査の進んだ国はアメリカです。15年前から原潜を北極の海底を航行させ本格調査を独占しきた。ある程度のデータはカナダ、ノルウェー、デンマークに提供されている。

●スヴァルバードと日本
さて、スヴァルバード(昭和一桁までの戦争世代はスピッツベルゲンという)はノルウェー領土として一般に認められているが、法的には1920年にパリで締結された委任統治の主体であり、資源は条約締結に署名した国にも権利がある。1920年の条約とて、国連憲章の敵国条項の如くいまや有名無実の条文だが、ロシアがスヴァルバードに炭坑の町を持っているのはこの権利を文字通り実行しているわけだ。他の署名国イギリスや日本などは鉄仮面ではない良識がある。

だが、もし大陸棚による線引きが北極海に適用されるとすれば、スヴァルバードの北極側にある大陸棚資源を要求する権利が新たに生まれる。理論的にはそうなる。へ理屈をこねると思われようと一応わが政府は何かのついでに質しておくべきだろう。さもなくば、いま環境保護団体などが経済活動を許さない国際南極条約にならって北極でも北極条約をつくろうと活動しているが、そちらに加担すればよろしいかと。

実際、この周辺海域の魚資源は欧州の食卓であり、デンマークとノルウェーは漁業禁止区域を設けて資源維持に当たっている。北極の氷がドンドン溶ける今,この水域が漁業無法地帯にならないようにすることが先決だ。(続く)



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