安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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銃弾50発、射殺のNY警官に無罪
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〈 2008年 4月 26日 土曜日 )


●50発でハチの巣にされた素手の若者
警官が連射した50発の拳銃でハチの巣にされたショーン・ベル(黒人、23才)の一審判決が無罪となった。裁判長どのは『警官として各被告の対応は犯罪に相当するものではない』 “the police response with respect to each defendant was not found to be criminal.”と読み上げる。発砲した5人の警官のうち3人が過失致死罪、ほか「危険にさらす無謀な行為」とかいくつかの罪状でで起訴されたのですが、ひとりの白人警官は31発も至近距離で発射している。殺人狂ですよ。無罪?そりゃないでしょう。この裁判は大問題だ。

06年11月、NYクインーズ区でおきたベル事件はこうです:結婚式の前日、友人たちと独身最後のおあそびをクラブで過ごしたベルが、出てきた所をこのストリップクラブを内偵中の警官に疑われて一斉射撃を受け、射殺された。この事件で思い出されるのはロンドンのメトロでブ若いラジル人男性がテロ内偵中の警官に至近距離から8発を連射され死亡した事件である。3〜4年前だったか、この警官も正当行為として裁判にならなかった。たしか警官は免職処分を受けている。英政府がブラジルの被害者家族に多額の補償金を払って幕引きした。だがベルの奥さんと子供には補償金なし、民事でも審理して補償をえるべきです。

●裁判長の心証を悪くすると……
NY州最高裁は陪審を加えず、裁判官のみによる法廷審理で進められた。このあたりの米司法制度に疎いので私にはわからないが、裁判長は検察側の主張を認めず、ショーンと一緒にいてやはり銃弾を受けた友人らの証言を信用できない。『疑わしき以上の確証はない』“The people have not proved beyond a reasonable doubt”と退けた。状況から警官に発砲する理由があったというんですが、挑発的振る舞いがあったとしても丸腰の男性をハチの巣にして罪をとわないのは解せない。

裁判長Judge Coopermanは74才、クイーンズ・カウンティーの主のような判事である。念のため人物を調べると冷静沈着、雑音に超然として公平でストレート、と評判はすこぶるよろしいのです。過去の事例を見ると護送中の警官二人を殺害して逃亡した囚人に死刑判決、スタンガンで不良少年を翻弄した警官に厳しい実刑を言い渡している。厳格なんですな。

ですが、わたしはこの裁判長が信用できない。証人の心証が悪かったとしても証言内容の真偽を深慮したのか、要するにクーパーマン裁判長はストレートですが洞察力に欠けます。口べたで印象の悪い人間は社会的にソンだが、裁判ではソンにならないようにして裁判官は聞き上手になってもらいたい。

無罪判決を受けた3人の警官は警察本部による処分や、米検察局が連邦裁判所に控訴することもありえる。このままではNYの黒人が黙っていまい。オバマは果たしてコメントするだろうか。(了)



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