安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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チベット騒乱と北京OLボイコット
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〈 2008年 3月 22日 土曜日 )


●北京オリンピックをボイコットする国はない
中国の人権蹂躙に反対しない人は中国国内の大半を除いてまずいないだろう。また中国の言動に不快が募る怒りん坊はボイコットでハラいせしたい気分だろう。しかし北京オリンピックの特異性は、スポーツの祭典以上に中国政府の祭典であり中国政府と中国人のメンツがかかっている。

チベット騒乱を中国が力で弾圧したことで、北京オリンピックをボイコットする国はない。ボイコットすればあとがコワイ。世界情勢は一気に不安定にり、ドル崩壊だってありえる。ボイコットをいちばん恐れているのはアメリカです。アメリカのできることは、北京オリンピックに出かける米人への旅行注意事項くらいか。しかしなかなかに凄まじい。国務省ファクト・シートより、ここの2ページ記事がよい。http://abcnews.go.com/Politics/story?id=4492008&page=1

ダライ・ラマのファンで親友、中国には夙に厳しいナンシー・ペロシ米下院議長でもボイコットは言えない。ブッシュは北京に行く。サルコジも行く。消極的な態度として英ブラウンと独メルケルは欠席か。馬英九は冷静を失いボイコットを口走ったが当選すれば北京オリンピックに行くだろう。

●ダライラマの友邦的中国観
チベット独立を望まず、徹底した非暴力と自治権拡大を説くダライ・ラマは北京開催がきまった2001年に4分の3の祝辞述べているが、その主張は今も変わらない。大人口、経済力、軍事力の3点からみてオリンピック開催の資格は充分にある。唯一4番目の最も重要で問題の『人道』が欠けている……というのがスピリチャル・リーダーとしての猊下の持論である。ではあるが、欠席する元首・首長や選手には陰で拝して感謝されるでしょう。

空気汚染を心配して北京に長居は無用という選手は少なくない。開会式にどのくらい各国選手がそろうか、国旗を先導しない国があるかもしれない。派閉会式は選手ガタ減りだろう。競技場を行進中に開催国の小旗を振る習慣は北京でどうなるか、少ないとおもわれる。

[以下は、本論からズレます。用事とお急ぎでない方はどうぞ]
●ノルウェーの北京ボイコット運動
北京オリンピックをボイコットしようとする動きは8-9年前にIOC総会が08北京開催を決定した時からあることはあった。当地ノルウェーを例に挙げると、中国の投獄されている運動家反政府民主化運動を支援するアムネスティ・インターナショナルほかこの国に多い様々な人権団体、ノルウェー政府から資金提供されているチベット亡命政府の事務所がボイコットを呼びかけてきた。変わり種としてはこれも政府資金で活動している大組織『ノルウェー自然保護協会』がある。

この自然保護協会は08年オリンピック施設建設のため、中国が80万立方メートルのメルボー木材をインドネシアのパプア/ニューギニア熱帯雨林から調達する計画に抗議し、中国政府とIOCに中止を要請した。東南アジアに多いメルボー材は硬くフローリングに広く使われ、アメリカ・日本でおなじみの建材です。その90%が違法輸入とされる。ノルウェーでは環境保護のため販売禁止になっているが、豪華ヨットの甲板や床にまだ使われていることが最近問題になっていた。

メルボルン・オリンピックのときは『環境』に配慮するかたちで、会場建設は木材使用をけずった建物になった。で、北京もメルボルンに倣ってあのような鉄、プラスチック、ガラスとコンクリを多用してメルボー材の乱伐は免れた。ただし、元地に住んでいた住民への補償の不備や、オリンピック・グッズ製作工場の劣悪な労働環境が報道され、オリンピック・グッズの不買を訴えるメディアがあった。人権団体は改善を中国に働きかけるようこの国のIOC委員に直訴していますが、ナシのつぶて。

●チャールズ皇太子はボイコット
いつだったか、チャールズ英皇太子が北京オリンピックに行かないと言っか、皇太子事務所が発表したかがありました。チャールズがアジア、特に中国に好感をもっていないことはよく知られている。若い頃にホンコンでマムシの生血を差し出され、目を瞑って呑み込んだ。後で随行記者に『ノーブル・オブリゲーションだよ、ヒデエもんだ』とぼやいています。また、江沢民のいつまでも崩れない作り笑顔にゾッとしたとか、マニラを汚いスラムとこき下ろしている日記がマスコミに洩れて騒ぎになった。この件はたしか一度コラムに書いたとようにおもう。そんなわけでチャールズは北京へ行かないが、英王室からは公式見解ではないと断りがついた。

●人道重視のクシュネル首相とロワイヤル
チベット・ラサ騒乱があってから、オリンピックボイコットの動きが民間のあいだで高まっている。ハリウッド俳優仲間、欧州ではオリンピック代表選手が数人ボイコットを仄めかしている。クシュネル仏首相が開会式の不参加を提言したことがやや大きく取り上げられた。クシュネル社会党員でありながらサルコジに招かれ首相に就任したものの出番がなかった。先週からサルコジ人気が凋落したため、発言する機会が巡ってきました。クシュネルは国境なき医師団の創立に加わり、国連で人権をやっていた人道派である。できれば全面ボイコットしたいくらいだろう。セゴレーヌ・ロワイヤルは大統領選で北京ボイコットを考慮すると言ったくらいですから、フランス社会党はチベット支援に熱心である。(了)



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