●騎馬のチベットデモが駆ける
ラサ騒乱の翌日におこった世界各地でデモは、良く伝えられていたが、チベット自治区に隣接する甘粛、四川、青海などの生々しいデモの映像が、外部にでるようになった。四川省のアバ・チベット族はアパッチみたいに馬上疾駆するのですね。チベットから北の方新疆ウイグル自治区、モンゴルまでは草原地帯と砂漠が大部分。騎馬民族の大地ですから、歴史的にはそうであろうが、でも21世紀に馬を駆ってデモに馳せ参じ、追っかけ走る衆は足軽の図、映画のシーンを見ているようだ。ただし、草原ではなくて土の道路を走り、彼らデモの民衆には飛び道具がない。庁舎の中国旗を降ろしてチベットの旗を掲げた。
これはカナダTVクルーの映像、ラサ市内はオーストラリアの観光客が送ったフィルムがプロ並みである。
さて、今回の騒乱はオリンピックを控える中国政府が逆上してオリンピックと関連していることになってしまったが、最初のラサ騒乱にはオリンピック粉砕などまったくなかった。毎年この頃におこなう抗議行動の恒例行事。あれは51年の中国軍侵入か、大虐殺が行われたチベット動乱/ダライ・ラマ亡命の59年だったか、どちかを記念しての抗議行動で、これにはインドの亡命政府僧侶たちも行進する。
●胡錦濤の妄想
しかし、今回は僧侶と民衆の動員が近年最も大きかった。中国は『ダライ・ラマの煽動である』と、これは根も葉もない暴論ですが、たぶん本気でそう考えているのでしょう。この暴論を中国国民は真相として長らく教えられ、信じて疑わない空気になっている。ために中国は国内世論を気にせず、まいつだってそうだがいくらでも弾圧できる。天安門では民衆の批判があったが、今回はそれもない。
59年動乱および89年の暴動はCIAが手を貸したといわれる。89年の暴動にし烈な弾圧を加え、数十万人のチベット僧侶を殺戮したのが当時のチベット自治区の党書記長、アメリカ流に言えば高等弁務官であったのが胡錦濤である。これでトウ小平に北京に呼ばれ出世した。ちょうどプーチンがアフガン撤退と冷酷非常なチェチェン弾圧でエリツィンに認められて出世したように。
胡錦濤は「CIAが……」とは言えないので、米欧の支援を受けるダライ・ラマを騒乱のマスター・マインドと指弾する。責任転嫁でなくホンネで信じています。新疆ウイグル自治区と台湾にスキを与えないようにどんな強硬策でもつかうだろう。さらにオリンピックを絶対成功勝利せねばならない胡錦濤は、外訪予定を変更する弱みを見せられない。日本が延期を……といっても来ますよ。さような胡錦濤を日本に迎えて、東シナ海のガス油田もギョーザもへったくれもあるもんか。しかもあの首相、あの外相、あの創価学会会長じゃ、希望もヘチマもない。
●英の党首討論
英下院議会の党首討論、19日はチベット問題に対する対中姿勢が生温いと攻撃するキャメロンに、ブラウンが温家宝首相と電話で朝話しあい、5月にダライ・ラマとロンドンで会うことを告げたという。すると、キャメロンは「それは良い決定です」と褒めましたな。議会または委員会でもいいが、小沢vs副田で頻繁に党首討論ができないものでしょうか。(了)