コラム関連で先週来のニュースをフォロウしておきます。
●サルコジ第2ラウンドでKO
2回に分けて行われたフランス地方選(県市町村議員と県会議員選挙)第2ラウンド(市町村で過半数に達する政党がない場合)でサルコジの与党UMPが大敗する国民の審判がくだった。社会党49.5%:与党連合47.5%と、大敗と言えない数ですが、都市部を失った痛手はおおきい。マルセイユだけ辛うじて勝った。ここは移民と密入国の玄関口ですから、移民に厳しいサルコジ政策が及第した。
結果を日本に喩えると、大阪だけ自民党で札幌、東京。横浜、名古屋、京都、神戸、広島、北九州、長崎、熊本が社会党多数で社会党の市長さんという事態です。サルコジ大敗である。理由は前回にも書いたので要約すると。1)決して内政改革をおろそかにしたわけではないが、結果が出ないうちは評価ゼロ。2)世界金融クランチの影響。3)失業率増加、現在7.5%。 4)大統領のオッチョコチョイに落胆。農業祭を訪れたサルコジが展示関係者に握手を拒否され、返した言葉があんちゃん風、意訳すれば『鼻血ブーで死んじまえ』とでもなりますか。
●野党候補を排したイランの選挙
イランの選挙は野党候補者の多数を資格を満たしていないとして排除しているため、少数の改革派も含めて保守派内での争いにすぎず、最高指導者のアヤトラ=ハメネイが舵取りできる体制を維持している。ハメネイがアフマディネジャドでよかろうと判断したのはなぜか、宗教政治に非を唱えなかったことと核開発に路線を引いたこととおもう。
原油価格がピョンピョンあがり、中東産油国の景気は天井知らずというのに、イランの原油利益はどこに消えた?革命軍と聖職者への貢ぎと貧者(地方自活農民)へのお布施です。お金は出たきりで戻ってこない。体制上、経済政策に中国を手本にせよという改革派もいるが、イラン経済は破綻寸前ですぞ。バムの遺跡を破壊し、3万人の犠牲者を出した2003年の大地震以来、さいわいイランでは地震がおこっていない。次回は核施設が……ってことも考慮されているのでしょうか。
●パキスタン下院議会、傍聴席のシャリフとザルダリ
PPPは首相候補を決められないまま、ムシャラフは予定通り下院議会を召集、形式的な新旧議員325人の就任宣誓をおえる。議席のないザルダリとシャリフは傍聴ギャラリーで見学した。これに先立ち、ザルダリ=ブットの人民党PPPとシャリフのイスラム連盟PML-N が正式に連立することで合意した。シャリフ側が要求していたチョードリ最高裁長官を含む60人の判事復職と憲法改定をザルダリが呑んだことで連立政権ができたわけだが、憲法改定とはムシャラフが度々改憲した条項を元に戻し、ムシャラフの大統領地位が違憲であるとして弾劾裁判にかけるためである。シャリフはムシャラフ-クーデターによって失墜し、刑務所に投獄された一生の恨みがある。シャリフ自身は首相より次期大統領を狙っているのか、首相に興味なく(議席無し)自派から閣僚はださないと言明しているように、政治より個人的怨念をはらすのが先決らしい。
月曜の議員総会で、下院議長ミルザ(Fehmida Mirza,PPP)、副下院議長にクンジー(Karim Kundi,PPP)がノミネートされ、翌18日のうちに承認される運び。なお、首相はPPPからファヒムを筆頭に5人が候補にあがっているが、シャリフとソリが合わないのでどうなりますか。ブット派の古参とシャリフは不倶戴天の政敵である。ザルダリは「私を首相に推す声が多い」と前言を翻して補欠選挙に出馬するといいだした。知らぬ間に不正ビジネスで起訴されていた数々が免訴になっていて準備していたのだな、ああ、やっぱりかです。シャリフとの密約が臭う、したがって今週中にノミネートされ、来週早々にも承認される首相はザルダリ首相選出までの繋ぎである。組閣日程もきまっているが、予定通りゆかないので忘れよう。
もうひとつ、気になるのは上院では与党PML-Q'sが多数であり、憲法改正は連立政権の思惑通り進むか、法的には困難である。シャリフは『大統領弾劾までゆくまえにムシャラフがタイムリーに決断するべき』と、ムシャラフから恩赦をうけた返礼みたいですね。(了)