安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ベオグラード、反米英の一日花火
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〈 2008年 2月 23日 土曜日 )


●セルビア政府の油断
コソボ自治区がセルビアから分離独立を宣言してから数日たった21日、はじめて焼き打ちをみた。米大使館に放火し、中に入った狼藉の一人が焼死したとは笑止千万な。そのほかマクドナルドが襲撃の被害にあった。

中国で反日が盛んな頃、日本大使館と日本レストランが襲撃されたのとおなじパタ−ン。中国の和食屋さんは殆ど中国人の経営でしょ。マクドナルドはフランチャイズ制で、従業員はセルビア人だ。狼藉者はどこの国でも短絡的に暴力行為にはしる。被害を受けた国連事務所や西側の在外公館は直ちに抗議し、セルビア政府の全面謝罪を引き出した。翻ってこういう場面で日本側のの対応は愚図で物わかりが良すぎやしないか。政府も国民も。毒入りギョーザや、サッカー試合の暴行にもっと抗議し、発信することが重要、でないと結果は泣き寝入りになります。

話をもどして、首都ベオグラードのデモは『平和的』に行われてきたのでポリスは通常通りの警備だったのがうかつだった。集会の規模が大きくなれば、破壊活動にウサをはらす連中、少数だが蝟集し、警備が手薄なのをさいわいに放火と破壊に走った。ひとえに『先の読めない』セルビア政府の責任である。

●ミトロヴィツァ町、分断の橋
したがって、政府が自覚したいま、同じような狼藉はおこらない。内乱のおそれなんて論ずる輩は短絡的。そんなことありっこないのです。翌日は土曜日というのに夜のベオグラードは静か、コソボ北部のミトロヴィツァでセルビア系住民が『分断の橋』二向かって行進、NATO軍で構成された国連治安部隊に阻止された。コソボには2万人のNATO部隊が警戒しているので、心配時はない。

『分断の橋』はミトロヴィッツァの町中でセルビア系住民(10%、ギリシャ正教)とアルバニア系住民(90%、ムスリム)を分けるごく短い石造りの太鼓橋です。100メートル余りの太鼓橋。現在の橋は、コソビ紛争中にNATOがセルビアによるアルバニア住民の虐殺を防ぐため破壊した旧橋を再現したものですっかり風情が消えた。

元の橋は歩行者用だった。古い橋の頃、民族紛争の最中のある日、両方に分かれて恋人同士がいた。片方の女性がボーイフレンドに会いに橋のなかほどに差し掛かったとき銃声が……。そのまま長い間橋に横たわる瀕死の女性を撮り続けた映像があった。危険で助けに行けないのである。女性は死亡した。わたしはこういうストーリーに弱くて忘れられない。

● 国連に裏切られたセルビア国民の感情
なぜセルビアがコソボ独立に反対し米英西側を憎むのか。概略すると:現在のセルビア人は、アルバニア民族虐殺によるセルビア国家の民族浄化という蛮行をおこなったミロソヴィッチとカラディッチたち一派とは違うという認識がある。彼らは国際法廷で裁かれており我々国民に非はない。現在は民主主義政治と民族融和を達成し、コソボはセルビアの領土である。そしてセルビア大統領にEU加盟を訴えるタディッチを選んだところで、西側はコソボをセルビアから分離した。彼らがデモで西側を『裏切り』と呼ぶのはそう言うわけです。他方、米・英・国連はセルビア国民にミロソヴィッチと連帯責任があるなどと思ってもいないが、コソボ自治区の独立は9年前からプロセスを踏んで、辿り着いた唯一の解決策と考えている。(了)



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