安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ムシャラフ時代の終焉
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〈 2008年 2月 20日 水曜日 )


●パキスタン総選挙の結果:
PPPザルダリのブット派 ミ 88議席
PMLシャリフ派 ミ 66議席
PML-Qsinムシャラフ支持派 ミ 38議席
MQM与党よりの民族派 ミ 19議席 (ザルダリと連立?)
ANP非宗教パシュトゥン ミ 10議席(ザルダリと連立?)
MMA 原理派  ミ3議席 (かつては野党第一党、見る影もない)
その他の党 35議席

●負けを覚悟のムシャラフ
ムシャラフ支持母体の与党が完敗。想定内のことでしたが、負け過ぎだぞ。地元のプンジャブでも劣勢。ムシャラフは覚悟していたといえ、民主選挙を示さなければならず、自ら首を絞める結果になった。一方、パキスタン国民の反ムシャラフがバッチリ白日の下に出た感じ。ムシャラフに追放された元首相のシャリフは勝ち過ぎだ。暗殺されたベナジルの棺のうえに乗っかったザルダリが第一党になったものの、シャリフに票を奪われた。…世にザルダリ嫌いの多きかりける。

もっと取れると思っていたザルダリは連立をあやふやにしてきたが、結果がほぼわかった火曜日の朝,記者会見で野党連立を口にした。シャリフと連立するとは言わなかったが、連立に前向きなMQMとANPと“組んでやっと過半数。これですと前回書いた「シナリオ2」になる。

●3分の2を制する野党連立なるか
だがムシャラフを弾劾、辞任させるには両党合わせて3分の2議席が必要。シャリフと両党合わせても153議席、総数272議席の3分の2に達しない。やはり4党連立が要る。シャリフはザルダリとの連立を呼びかけているので、連立にはそれほど難しくないが、PPP内部ではかならずしもザルダリが首相候補にきまったわけでなく、ブット留守中に党首であったベテランのファヒムを支持する党員が依然として多い。

●パキスタン史上最も民主的な選挙
選挙はまことに公明盛大に行われ、監視員も文句のつけようがない。ま、暴力があり、選挙がらみで24人が死亡と伝えられ、不正もあった。有権者に与えられる選挙登録用紙を買い付けたり、各党の支持者が乱闘したり、野党支持の選管役員が投票所に警官の護衛で車に乗ったら別のところに連れて行かれたとかだが、投票所での事件は皆無、開票はパキスタン史上最良の公明で確実におこなわれた。投票率40%は一見少ないようだが、例年この程度であり、不思議はない。暫定首相ソオモロが無事選挙を民主的に終えられたことを述べてミッション完遂に安堵、更迭をまつばかり。惜しい人でした。

米の超党派が、ムシャラフに透明な選挙を念押しにイスラマバードへ行った。ムシャラフはキチンとやります。負けてその準備もしています。馬鹿で余計なことを、と思ってたら、火曜の夜はザルダリと会談している。バイドン、ケリーの民主党重鎮と共和党のヘイゲル上院議員たち。

●ザルダリとシャリフが握ったムシャラフの去就
さて、ムシャラフは進んで辞任する気はさらさらなくて、誰が首相になっても野党政府と協力、国民和解を訴えている。まだ「オレの目の黒いうちは」という気概はある。あるけれど選択肢はムシャラフにないのだな。馘首した判事達は復活してくる。特にムシャラフが憎悪するモハンメド・チョードリ最高判事が復職します。またムシャラフに変えて北朝鮮に核技術を売ったあのDrカーンを大統領にというハナシが出ている。そんなこともあって『オレの目の黒いうちは』となるのかな。

そのほか今回の選挙でオヤっとおもうことは、盤石なムシャラフ独裁体制が倒れる時は有徳・重鎮で知られた閣僚、大物政治家たちが落選したこと。もうひとつは原理派、つまり自爆テロのタリバン/アルカイダに同情的なイスラム宗教派が国民からノーを突きつけられたこと。イラク民衆がテロに同情しなくなったことと合わせて明るいニュースです。
(了)



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