安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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パキスタン総選挙迫る
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〈 2008年 2月 16日 土曜日 )


●いよいよ月曜日、暴動に準備完了
ムシャラフ政権のこれからが決まるパキスタン下院議員選挙は18日の月曜日に迫った。西側の不安は『核』が誰の手に行くか、でありましょう。選管の準備は完了し、とくに不穏な動きが予想されるラワルピンディ、ここはブット一族の地元でベナジール暗殺のあった町ですが、この地にある205の投票所を軍の治安部隊16中隊が警備にあたり、今日土曜日から警邏に巡回する。主な任務はブットのPPP党が負けた時には、インチキだと暴動が起こるのを防ぐためですが、野党側ははじめからインチキ選挙とみなしているのでしまつがわるい。

●ムシャラフ影響下、公明な選挙?
選挙は市町村役場の選挙管理委員会が責任もって行う・・というのが常識である。しかし部族統治の風習が残り、民政が遅れているパキスタンではこの公的選管を認めないオカシなことがいっぱいある。野党や地方部族は自治体にはムシャラフ政府の息がかったいるから独自の投票所でおこなうことを主張。実際自治体職のみならず金融界をふくめて民間の基幹産業に軍将校が出向しているので疑われても仕方ないが、先月キアニ最高司令官が民間から数百人の将校撤退計画を発表、当座は選挙に関わるらないよう指令をだしている。国際監視団と選管の協力がスムースで、まず及第の民主選挙になるとわたしは信じる。

イスラム原理主義が強い北西部では、そもそも民主選挙をみとめず、イスラム宗教政治による国家を目指しているので、与党野党の区別なく自爆テロを繰り返している。07年度は爆発的に増え、パキスタン全土で約60の自爆テロがあった。標的は主に治安軍と警察隊員であるが、民間人が犠牲になるとムシャラフ陰謀説が流布し延いてはいい加減な国際世論が形成される。

●盛り上がらない選挙キャンペーン
選挙運動はテロの棄権が払拭できず、ラリーはベナジール暗殺を境に火が消えたようになってしまった。ま、役者がいなくなったこともある。そのかわりポスター、チラシの類いに規制がないのか過剰で乱雑。ジャイアントポスターが大流行りである。候補者数は前部で2000人ほど乱立しているのでポスターがやたらと多い。元首相のシャリフはオバマに倣ってCHANGE!を標語にしていますが、沸きませんな。有権者は8000万人、下院議員選挙に加えて4州で衆議院選挙が同時に行われるが、国民の熱気が冷めた現在、投票率は予想を下回るだろう。大統領選挙なら盛り上がること受けあいだが、それは国会の選挙で決める。ムシャラフは昨年再任されたところだから与党が負けても留任するとして、過半数を割るのは確実でザルダリとパワーシェアリングが必要。ザルダリはまだウンと言っていないが結果次第だろう。

文盲の多い国の例にもれず、パキスタン投票用紙は党派をシンボル絵で示す。参考に代表的な党とそのシンボル図柄をあげておきます。
ブット(co-党首ザルダリ)のパキスタン人民党PPP <ゲンコツ>
ナワズ・シャリフ元首相のムスリム同盟ナワズPMNL-N <タイガー>
与党ムシャラフのムスリム同盟カイデ・アザム PML-Q <半月と星>
イスラム宗教者、ジャミア・ウレマJUI-F <はしご>
カラチ地盤のマタヒッダ・カミ運動 <凧>
北西部パシュトゥン族の国民党 <カンテラ>
なお、民主連合に属する野党は選挙をボイコットする。(了)

余談:○野党側のキャンペーンは与党 Pakistan Muslim League-Quaid-e-Azam (PPM-Q)を “Qatil League (Killer League),”殺人同盟と貶している。○ベナジール・ブットが持ち歩いていた雑記帳や手紙類をもとに自伝が出版された。このなかで帰国した場合、身の 安全は保障できないと、さまざまな原理派、反乱集団の暗殺計画についてムシャラフから情報を知らされた。ところがベナジールは反乱グループを操る幹部将校 ががパキスタン軍の中にいると名前をあげてムシャラフに書き送り、ムシャラフ陰謀説はこの部分を根拠に持ち出している。根拠はベナジールのデタラメな言い がかりである。



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