●寒波のウクライナにロシアのガス戦略
今冬の中央アジアは寒波が居座り、アフガニスタン、パキスタンの北部まで零下かなりさがり、ウクライナや、〜スタン(国)と名のつくウズベク-キルギス-ツルクメン-カザフなど-は零下40度まで下がった日があった。暖房はというと昔から石油であるがキルギスなど極貧の国の庶民は燃費がない。ジっと絶えて春をまつのは北朝鮮より悪いかも。
ユーシェンコのウクライナは昨年11月からロシア、ガスプロムから石油の追加供給を受けて寒さを凌いできたが、代金を払っていない。首相に返り咲いたユリア・ティモシェンコがガスプロムのウクライナ担当子会社と彼女が関係する受け入れ会社との合弁企業を画策しているらしい。90年代にロシアのガスで稼ぎまくったユリアは内部事情に詳しく、ロシア側との交渉でしたたかである。
ロシアは昨日の夕6時までに支払わなければ栓を締めると宣告していた。支払いが滞るとデッドラインを突きつけるのはいつものことなので、解決もまたいつものようにユーシェンコがモスクワでプーチンと直談判、木曜日から支払いを開始するとい打開案でまたいつものように当座は解決した。
そんな具合だからメディアは深刻に捉えない。というのも欧州にパイプで送られるガスの80%はウクライナ経由である。ウクライナのオレンジ革命のあと、プーチンは制裁にガス供給を半減した。西側に寄るなら国際市場のガス代を払え、という至極尤もな理由なんですが、さて欧州が困った。安定供給を約束できないロシアの資源政策に欧州首脳から苦情と対ロシア政策変更が議論され、プーチンはガス供給再開を余儀なくされた。という前例があるため西側は問題にしなくなったのですが、ここで古くて新しい問題、軍事問題がクローズアップされてきた。
●プーチン、ウクライナを目標に核弾頭配備?
ロシアとウクライナの話し合いは3時間、会談後の記者会見でプーチンが異例に強い警告、要旨は『もしウクライナがNATOに加盟し、ミサイル防御システムを配備するなら、ロシアはウクライナに向けて各ミサイルを配置する。NATOに入ろうと望むならウクライナの主権は限定される。欲するということだけでも理論的に実現不可能を排除できない。したがってロシアは核弾頭をウクライナに向け照準をあわせておかねばならない』。
中国が台湾を目標にミサイルを配列していますが、ああいう風になるのでしょうか。プーチン・ロシアはポーランドが米のミサイル防御システム配備を決定した時も同じような凄みをきかせました。実際ロシアの偵察機「クマ」が北海上空に頻繁に出没しており、先日は日本領空を通過、太平洋上を航行中の米空母上空をクロスするなど、力の示威が増している。一方、中国が衛星を撃ち落とすロケット実験に成功したことで米中露の軍事競争がスピードアップするだろう。
話をウクライナに戻して、毒を盛られたユーシェンコあばた顔がずいぶんよくなっていますね。記者会見ではプーチンの攻撃にキチンと反論「独自の外交と防衛計画の権利、外国基地を(ロシア以外)置かない」一歩も引かない。ウクライナにはグルジヤのように叩かれないクリミア・カードがある。ご存知のようにロシア黒海艦隊の基地があるクリミア半島はウクライナ領である。年間9300万ドルでロシアに貸与しているが、値上げを要求。ユーシェンコはこのとっておきのカードのおかげで西向きの体制が維持できる玄妙な環境にある。(了)