安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
オバマが嫌いなわけ
------------------------------------------
〈 2008年 2月 7日 木曜日 )


●スーパー火曜日おわる
アメリカは広い。スーパ=火曜日の投票時間は東岸から西岸まで5時間30分の差がある。これをものともせずライブで見ておりましたが、開票結果が投票締め切り後1時間で大勢が判明するお国柄ではないのですな。州政府によってタッチ・パネルをつかうところ、読み取り装置に挿入するところ、用紙にボールペンでシルシを付けて投票箱に入れる旧来型のところと、ハイテク利用にバラツキがある。だから州により集計が長引いて、クリントンがマサチューセッツで勝ったころ、すなわちテッドに一発かましたところで気分が良くなり、寝ることにした。

さて翌日、接戦です。獲得代議員数ではヒラリ−がやや優勢ではあるが、指名に必要なマンデイト(マジックナンバー)にははるかに達せず勝敗が決するのはは3〜4月になるかと。体力と気力とお金がふんだんに要り用です。

●ヒラリーがオバマを振り切ったNYとCA洲
クリントンがニューヨークNY、マサチューセッツMA、ニュージャージーNJ、カリフォルニアCAをホントに制したことはとてつもなく大きい。絶対落としたくなかった洲、地元と支持基盤だったこれら大人口を擁する洲が、オバマの追込みにヒヤヒヤでしたから。NYは地元、負ければ地元での上院活動が否定される。ボロ負けしてもここだけは落とせない拠り所を守りました。

MAのテッド・ケネディー、キャロラインも一緒にオバマ支持に回り、大観衆を集めるラリーを展開していた。それがどうだ、予想に反してクリントンが勝ったではないか。テッドは上院選挙に前回はギリギリで当選、実際面での信望は貫禄ぶりほどあるわけではない。ま、全国的には影響あったとおもうが、テッドが今頃になって急にチェンジ・チェンジと叫ぶのは滑稽である。御大よ思い知ったか!ああ、清々した。

CAのメディアは常規を逸したオバマニアぶりで、LAタイムスほかローカル紙30社ほど、トークショーのホストたちがこぞってオバマ支持を直前になってから滑り込んだ。もちろん勝ち組に参入したつもりだったのですな。ヒラリーのラティーノ票を取り崩したかに見えたが、フタをあければちょろいもんだった。

オバマは人種の融和、党派を超えた一つのアメリカを訴え新らしい政治に「変革」を訴える。わたしはあの美辞麗句が性に合わず、生理的に遠ざけるのですが、ガマンしてぼちぼち説明します。

●雨を降らす男
まず人種の融和は選挙結果からもわかるように人種、白人、黒人、ラティーノの一体化は絵に描いた餅にすぎない。公民権運動のジェシー・ジャクソンは黒人の地位向上に生涯かかわってきたが、1988年の大統領選では時期尚早で勝ち目はなかった。2008年、やっと人種を問わず若年層に黒人大統領が受け入れられる環境になり、そこへオバマが現われたのである。それだけのことだ。オバマはジャクソンのような大衆運動にタッチしたことはない。オバマはコーリン・パウエルやコンドリーザ・ライスと同じようにプロフェッショナル出身である。それにしては政策が実務的でないのであります。とにかく人種融和を訴える資格はない。希望を説くのは良い、しかし手に取るように希望を描くのは魅力あるペテン師『雨を降らす男』なのである。

●党派性と民主主義
党派を超えた一つのアメリカですがね、民主政治とは2大政党でも小党乱立でもかまわない、それぞれ主張の違いがあって複数の政党ができるわけで、それを調整するのが議会である。共和党との協力姿勢を打ち出せばよいのであり、そこはレーガンの議会重視という優れた前例がある。おもうに、党派を超えたひとつのアメリカが存在するのは国家に危機意識が高まったときにほかならない。イラク侵攻は共和・民主が一致して決定した。党派を超えて挙国一致したわけだ。で、反対した議員は両派で5指に足らない。オバマは特にイラク侵攻に際して反論したことはなく、議決にそっぽを向いた。つまり一つのアメリカになる瞬間に加わらなかった。オバマはヒラリーが参戦に賛成した事を責め、自分が反対したことを得意に言うと、オバマニアたちはそれで歓喜する。しかし、今後のイラク政策基本は両人とも大差ないのである。オバマのレトリックは歪曲され汚れている。

●民衆は戦争に倦むとCHANGEと叫ぶ
チェンジ(変革)のバトルクライについてはビル・クリントンがオトギ話と批判したのを皮切りに、共和党のロムニー、ハッカビーがWhat Change?と揶揄したり、すでにあちこちで見受けられるので書き写しはしませんが、個人的にハラにおもうことがある。1960年代はじめ、ベトナム戦争に倦み疲れしたアメリカにプロテストソングが流行した。ボブ・ディラン、ジョアン・バエズ、ピート・シーガーなどが歌った歌詞はオバマの演説そっくりなのである。We shall overcome, The time they are a changing, Blowning the wind. This land is foryou and me. 等々、ご存知の方は納得されるだろう。イラクとアフガニスタンに倦み疲れした現在のアメリカにこの安易な熱病が再発し、それがオバマニアのフィーバーではないか。冷静に戦争終結と権益確保を模索したらどうか、そんな風におもう。ボブ・ディランはベトナム戦争終結後、この一過性熱病から変身して方向転換した。(了)



Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る