安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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パキスタンの近況と総選挙の準備
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〈 2008年 1月 31日 木曜日 )


● ムシャラフ、欧州歴訪に8日間
ムシャラフは1月21日から28日まで8日間の欧州歴訪、行く先々でメディアのとっちめにあいましたが、欧州トップたちの疑い深い ○核は大丈夫か、盗まれるような事態はないか ○選挙に不正はないだろうね、などにナンセンス。「公正で自由な選挙」を約束し、ムシャラフ政権支持を確認して帰国できた。ロンドンではブラウンに選挙管理委員の活動に支援金を提供された。

パリのホテルではちょうどイスラエルのバラク国防相が宿泊しているのを知って、密かに会談する。その前にダヴォスでライス長官、ブラッセルでNATOのシーファー司令官と会談しているのでパキスタン・イスラエル会談を怪しむことはないが、足下の武装派を怒らせるだろう。

●軍の自立と首相の権限拡大
そもそもムシャラフが8日間も国を空ける事が出来ることに注目されたい。こわくて首長がやすやす国を留守に出来なかったパキスタンがここまで来たのである。ムシャラフは徐々に首相の権限を増し、国軍最高指令官を辞任するまえから後任のキアニ将軍に多くを任せるようにしてきた。権限委譲はかなり進み、いまでは長期国外にいても政府は機能するようになっている。そのうち夏休みをとるのではないかとおもうくらい。

欧州歴訪の目的のひとつは経済です。ダヴォス経済フォーラムで行なったその旨のスピーチによると、現在パキスタン活動する外国企業は700社、外国企業が参入しやすいよう規制緩和する一方。欧州が施行している関税障害を取り除くよう懇願している。また国有企業の民営化を進めているという。ロシアが資源民営企業を国有化したのに反し、けっこうな傾向ではないか。

●深刻なエネルギー不足と遅れるプロジェクト
しかしパキスタンの経済は悪い。西洋的文化を売る産業は原理派テロの標的になる国だ。治安に不安があり、魅力的な資源のない国の悲しさ、エネルギーと小麦不足は最近のニュースでは相当悪い。いまのところ手持ちの石炭・石油による火力発電でしのぐしかない。ガンジスなど河川の枯渇は深刻な水不足を招いている。

ムシャラフは昨、はソオモロ首相、石油資源相のアーサヌラ・カーンほかを集めて、イラン−パキスタン−インド・パイプライン建設を軌道に乗せるため、インドと計画の合意を急ぐよう要請した。ほかにもアラビア海沿岸のバロチスタン地方ではタンカ−が入る港、沿岸ハイウェイ、ミラニダム、キチ運河、サンダク銅鉱脈開発などのメガプロジェクトが目白押しだが完成まで何年かかるか、こころもとない。

この燃料、電気、小麦、飲料水不足が解消するには数年かかるとおもわれ、ムシャラフの大統領地位は選挙に勝っても負けてもそう長くない。

●2月18日の総選挙
選挙の方は着々と準備態勢が整いつつある。投票プロセスの警備は、警察だけではムリがあるため、選管が民政の形で兵士を選挙のガードに雇用し、安全で公正な選挙を期することがきまった。選管にはすでに不正の動きがあると800件の苦情が寄せられているそうだ。国際オブザーバーも既に選管と協議を詰めていて、民主的と認める範囲に選挙が完了するとおもう。

人民党院政ザルダイは与党が提案した政権分担にまだ回答していない。ムシャラフの人気はブット暗殺からブッシュより低い20%台に低迷しているので第一党になる自信があるようだ。選挙中というのに殆どドバイの家に居る。(了)



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